翻刻
是を憂(ウレヘ)給ひしをつゝのおちといふ翁(ヲキナ)の教(ヲシヘ)
にまかせて海宮(ワダツミ)に入りて海神(カイジン)をたのみ彼(カノ)
釣針(ツリハリ)をたつね給ふときに海宮(ワタツミ)に豊玉姫(トヨタマヒメ)
とてうつくしき姫(ヒメ)のおはせしを娶(メトリ)て后(キサキ)と
し給ひしがかの姫の働(ハタラキ)にて兄(コノカミ)より借(カ)り
給ひし釣針(ツリハリ)を求(モトメ)給ひぬ則|豊玉姫御子(トヨタマヒメミコ)を
設(マフ)け給ふ是則|地神(ヂシン)五代の彦波瀲武(ヒコナギサタケ)
鸕鸛草葺不合尊(ウカヤフキアハセズノミコト)也是によつて我朝(ワカテウ)
古昔(イニシヘ)より龍宮(リウクウ)の事を唱(トナヘ)来れり然れ共
龍(レウ)の住(スム)といふ龍宮の事にてはあらし海宮(ワタツミノミヤ)
とは海中(カイチウ)に有ル一ツの嶋(シマ)をさすならん既(スデ)に
火〻出見尊(ホヽデミノミコト)の御寄に飫企都鄧利軻茂(ヲキツトリモ)
豆句志麻爾和我謂称志(ツクシマニワガイネシ)と宣(ノタマ)へり是
沖津嶋(ヲキツシマ)の中に豊玉姫(トヨタマヒメ)のおわしますにより
て和我謂称志(ワガイネシ)と読(ヨミ)給ふ事|決(ケツ)せり謂称(イネ)
志(シ)とは妻(ツマ)といふ事なり決定(ケツジヤウ)して海府(カイフ)の