翻刻
事にはあらす譬(タトヘ)は天子の玉顔(ギヨクガン)を龍顔(レウガン)と
いひ御馬を龍蹄(リウテイ)といふことく海中(カイチウ)にある
御殿(ゴテン)の名を尊(タツト)んて龍宮(リウグウ)と名付る成へし
龍は徳を備(ソナヘ)たる物(モノ)にて能(ヨク)天地の間に自在(ジザイ)
する故(ユヘ)に中華(モロコシ)にても天子を龍(レウ)に仮令(タトヘ)
て云事多し釈(シヤク)の袋中(タイチウ)より琉球(リウキウ)神道と
いふ書(シヨ)に琉球(リウキウ)の王宮(ワウグウ)に額(ガク)あり其|額(ガク)に
龍宮城(リウキウジヤウ)と書て有ルよし記(シル)せりかやうの
事をあやまりて海龍(カイリウ)の神(カミ)の住嶋(スムシマ)といふ
か卓氏藻林(タクシソウリン)には龍宮は佛寺(ブツジ)也とあり然る
時(トキ)は龍宮といふは寺の異名(イメウ)なり《割書:法華経ニ|龍王ハ宮》
《割書:殿ヲ守護 (シユコ)セント云 願 (クワン)アルノ故ニ|佛寺 (ブツジ)ノヤネニ龍の形ヲ彫刻 (テウコク)ス》惣して海中は魚
の住所にして何ぞ人の住することきの
宮殿(クウデン)あらんや
又問|予(ヨ)が古郷(フルサト)に海あり海中に海小僧(ウミコゾウ)といふ
者ありて形小児(カタチシヤウニ)のことく折ふし海上に出て