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コレクション: 養蚕の書

機織彙編 5巻. [1] - 翻刻

機織彙編 5巻. [1] - ページ 14

ページ: 14

翻刻

【右丁】  不懸不残起たる時桑を懸る事なり庭起の度毎如  此にするなり 一蚕種取る方種繭を十宛切り小口より繭中のひゞつ  を出し見るに十不残生たるひゞつなれは十分の出来と  定む十の中二ッ死たるあれは八分の出来三ッ死あれば  七分の出来又十なから生きたる中に一ッきづあるをば  死ひゞつと同しきづとはひゞつの惣身の中に黒き  星か又つやなく瘠ひゞつにしわ抔あるをば生きて  居るとも死すと同し如此二ッあれば八分の出来と  定む繭の中にある虫をは信州にてはときと云奥州  にてはひゞすと云野州にてはひゞつと云上州にては  さなぎと云 一ひいる《割書:是は蛾|之事》出れば取集て夕七ッ時に交合したる 【左丁】  を引き離し雌蛾斗り取り集て箱の蓋の類に種紙  を幾枚も敷き並へ種紙は厚き紙を用ゆ合せ目の  不重様に平に敷四方の縁へ塗板を立置けは卵  を縁迄生み付け外へ不出なり翌朝の七ッ時に右  の蛾を取出し外の紙へ入置き卵をうみ終るを見  て取り出し川へ流す如此初の種紙は夕の申時より  翌朝の寅の時迄都合七時を限りと定て取出す  べし永く置けは小便をしかけ紙付不宜也其後  のくずのには小便をしかけ紙の見苦しき故はり  紙【注】と名付くると云 一しみ繭は釜にて一度煮立て其上繭一ッ宛不残上は  皮を取れは其跡糸口立なり最も上皮取り仕廻  たれは水も取替又煮立て糸に取事宜きとなり 【注 NDLの翻刻には「ばり(尿)紙」とあり】

現代語訳

【右丁】  かけない。残らず起きた時に桑をかけることなり。脱皮の度毎に  このようにするなり。 一、蚕種を取る方法。種繭を十個ずつ切り、小口より繭中の蛹  を出し見るに、十個残らず生きた蛹なれば十分の出来と  定める。十個の中二つ死んだものがあれば八分の出来、三つ死んであれば  七分の出来。また十個とも生きているうちに一つ傷があるものは  死んだ蛹と同じ。傷とは蛹の全身の中に黒い  斑点があるか、またつやなく痩せた蛹にしわなどがあるものは生きて  いるとも死んだのと同じ。このようなものが二つあれば八分の出来と  定める。繭の中にある虫は信州では「とき」と言い、奥州  では「ひびす」と言い、野州では「ひびつ」と言い、上州では  「さなぎ」と言う。 一、蛾が出れば取り集めて夕七つ時に交合したもの 【左丁】  を引き離し、雌蛾だけ取り集めて箱の蓋の類に種紙  を何枚も敷き並べる。種紙は厚い紙を用いる。合わせ目が  重ならないように平に敷き、四方の縁へ塗板を立て置けば卵  を縁まで産み付けて外へ出ない。翌朝の七つ時に右  の蛾を取り出し他の紙へ入れ置き、卵を産み終わるのを見  て取り出し川へ流す。このように初めの種紙は夕の申の刻より  翌朝の寅の刻まで都合七時を限りと定めて取り出す  べし。長く置けば小便をしかけ紙の付きが良くない。その後  の屑のには小便をしかけ紙の見苦しい故、張り  紙と名付けるという。 一、生糸用の繭は釜にて一度煮立て、その上で繭を一つずつ残らず上の  皮を取れば、その跡糸口が立つ。最も上皮取りを終  えたれば水も取り替えまた煮立て、糸に取ることが良い。