翻刻
【右丁】
しぶき三度引よく干水に鉄漿を少し入むらなく【注①】
引又明礬を少し入村なく引水にてよくすゝ
ぎはる
ひはだ色染
一かりやすを三度引蘓木を煎し四度引又湯に
明礬の粉を少し入村なく引へし
青茶染
一下地薄花色に染苅安草三度引明礬如前文引
ご水へ墨を鼠色に入引なり
せんじ茶染
一常の茶を濃く煎し三度染ご水へ墨を入鼠色程に
して一度染る
薄がき染
【左丁】
一ご水にに石【注②】をよくすり交せ刷毛にて村なくよく
引水にてぬらし干なり此色をこく染れはしやれ
がぎ染と云
黒柿染
一墨にごを交せ二度引其上を薄しぶにて二度引
染るなり
羅紗(らしや)染
一下地を濃き花色下染しぶき百目程柘榴の皮二
十目水三升入二升四五合に煎し鉄漿少し入染る
なり
右大概の染方なり又木草の類の染に用ゆる品
多し委く記にいとまあらす延喜式或は本艸綱
目又通雅天工開物事林広記唐本の居家秘用
【注① この行の行頭の「一(一つ書き)」が抜けている】
【注② NDLの翻刻本の注に「(に石)丹石(にいし)」とある】
現代語訳
【右丁】
一、渋木を三度引いてよく干し、水に鉄漿を少し入れてむらなく引く。また明礬を少し入れてむらなく引き、水でよくすすいで干す。
檜肌色染め
一、刈安を三度引き、蘇芳を煎じて四度引く。また湯に明礬の粉を少し入れてむらなく引く。
青茶染め
一、下地を薄い花色に染め、刈安草を三度引く。明礬は前文の如く引く。呉汁へ墨を鼠色に入れて引く。
煎茶染め
一、普通の茶を濃く煎じて三度染める。呉汁へ墨を入れて鼠色ほどにして一度染める。
薄柿染め
【左丁】
一、呉汁に丹石をよくすり混ぜ、刷毛でむらなくよく引き、水で濡らして干す。この色を濃く染めれば洒落柿染めと言う。
黒柿染め
一、墨に呉汁を混ぜて二度引く。その上を薄い渋で二度引いて染める。
羅紗染め
一、下地を濃い花色に下染めする。渋木百目ほど、柘榴の皮二十目、水三升を入れ、二升四五合に煎じ、鉄漿を少し入れて染める。
右は大概の染め方である。また木草の類の染色に用いる品は多い。詳しく記すには暇がない。延喜式あるいは本草綱目、また通雅、天工開物、事林広記、唐本の居家秘用など