翻刻
【右】
の恐(おそ)れあり
第四 衣服(きもの)の事(こと)
衣服(きもの)は時候(じこう)の温熱(かげん)に随(したが)ひその便利(べんり)なるものを用(もち)ふるは無(む)
論(ろん)なりと雖(いへど)も夏分(なつぶん)は成(な)るべく蝙蝠傘(かはほりがさ)、帽子(しやつぽ)、衣服(きもの)は勿論(もちろん)手袋(てぶくろ)
沓等(くつとう)の類(るゐ)に至(いた)るまで皆(みな)白色(しろいろ)のものを用(もち)ふべし総(すべ)て白色(しろいろ)の
ものは太陽(たいやう)の光(ひかり)と熱(ねつ)とを反射(てりかへ)すものなればなり殊(こと)に白色(しろいろ)
のものは汚(よご)れ目(め)も能(よ)く目立(めだ)つ故(ゆゑ)度々(たび〳〵)洗濯(せんだく)するに至(いたれ)ればな
り汚(よご)れたる衣服(きもの)を着(き)るは徤康(からだ)を害(がい)して甚(はなは)だ宜(よろ)しからずそ
は何故(なぜ)なれば体中(からだ)より一旦蒸発(いつたんはつ)せし無用物(むようぶつ)則(すなは)ち垢汗(あかあせ)の類(るゐ)
の衣服(きもの)に付(つ)きたるを再(ふた)たび呼入(きふにふ)すればなり
【左】
襦袢(じゆばん)は夏(なつ)のみに限(かぎ)らず四季(しき)共(とも)に晒木綿(さらしもめん)を用(もち)ひ時々(とき〴〵)着換(きか)ふ
べし犢鼻褌(ふんどし)も同断(どうだん)なり
藍染(あゐそめ)のものは第一(だいいち)徤康(からだ)の毒(どく)となれば決(けつ)して襯衣抔(はだぎなど)にすべ
からず
常(つね)にフランネル或(なに)は紋派(もんぱ)にて幅(はゞ)八/寸位(すんぐらゐ)の腹帯(はらまき)を製(せい)し晝夜共(よるひるとも)
に巻(ま)き居(を)るべし
何程(なにほど)暑熱(あつさ)に堪(た)え難(がた)きとても裸体袒裼(はだかはだぬぎ)になるべからず是(こ)れ
たゞ巡査(じゆんさ)に拘引(こういん)されて罰金(ばつきん)を取(と)らるゝとのみ思(おも)ふは大(おほい)な
る了簡違(れうけんちが)ひなり餘(あま)り熱(あつ)きときは却(かへ)りて羅紗(らしや)フランネル等(など)の
冬服(ふゆふく)を襲(き)るべし凌(しの)ぎ能(よ)くなるものなり
現代語訳
【右】
の恐れがある。
第四 衣服のこと
衣服は季節の気温に応じてその便利なものを用いるのは当然のことであるが、夏は可能な限り日傘、帽子、衣服はもちろん手袋、靴等の類に至るまで皆白色のものを用いるべきである。すべて白色のものは太陽の光と熱とを反射するものだからである。特に白色のものは汚れもよく目立つゆえ、度々洗濯することになるからである。汚れた衣服を着るのは健康を害して甚だよろしくない。それは何故かといえば、体中から一旦蒸発した不要物、すなわち垢や汗の類の衣服に付いたものを再び吸い込むからである。
【左】
襦袢は夏のみに限らず四季とも晒木綿を用い、時々着替えるべきである。褌も同様である。
藍染のものは第一健康の毒となるので決して肌着などにすべきではない。
常にフランネルあるいはモンパで幅八寸位の腹巻を製し、昼夜ともに巻いているべきである。
どれほど暑さに堪え難いとしても裸体や肌脱ぎになるべきではない。これをただ巡査に連行されて罰金を取られるとのみ思うのは大きな了見違いである。あまりに暑いときはかえってラシャ、フランネル等の冬服を着るべきである。しのぎやすくなるものである。
英語訳
[Right page]
there is such a risk.
Chapter Four: On Clothing
While it is natural to wear clothing suited to the season's temperature, in summer one should use white items as much as possible - not only umbrellas, hats, and clothing, but also gloves, shoes, and similar items. This is because white items reflect the sun's light and heat. Particularly, dirt shows well on white items, leading to frequent washing. Wearing dirty clothes is very harmful to health because one re-inhales the waste materials that have evaporated from the body - namely dirt and sweat that have adhered to the clothing.
[Left page]
Undergarments should be made of bleached cotton not only in summer but in all four seasons, and should be changed frequently. The same applies to loincloths.
Indigo-dyed items are primarily toxic to health and should never be used for undergarments.
One should always make a belly band of flannel or mompa fabric about eight sun wide and wear it day and night.
No matter how unbearably hot it becomes, one should not go naked or strip to the skin. To think this is merely about being arrested by police and fined is a great misunderstanding. When it is extremely hot, one should instead wear winter clothes such as woolen cloth or flannel, which will make it more bearable.