翻刻!草双紙の世界

コレクション: NDL鳥居清長

通風伊勢物語 : 3巻 - 翻刻

通風伊勢物語 : 3巻 - ページ 3

ページ: 3

翻刻

扨も徳右衛門かたの二人り の御用は日〳〵とく いをあるきむかし とちかい今時は 御用はよふごさり ますかとはいわず だがまへてもふと ころでをして のそり〳〵と のぞく斗それ ても用はたりる なり幸介は きんじよのかみ さまやしぶむけ【渋剥け=あかぬけ】 た娘などにゑゝ 子たからいゝ酒 をはやくもつて きてくりやと いわれいゝ酒は わすれてもゑゝ 子はといはれたか なによりうれしく たちまちもつて くるやうなき だてなれは ふだんわ■し てしりをはしより うちを出ても きんしよをはな れるとしりを おろしてたゞ あそこのかみ ゆひとこ【髪結床】こゝの じしんばん【自身番】の ゑんはなへ よこたおしに なつてあそ このにやう ぼう【女房】はいき たのこゝの むすめは ざつたのと いふよふな はなしが おもしろく たちまち このごろは しほから でも くつた よふな こへに なり もし此中 向ふうらの【向こう裏 か】 大工のかみさんか ねてたのにたつた ひとついるふとん □□□□さんか 【に?五郎さんか】 ねていてわしが ゆくと酒五合のんで □□□おいたした【追い出した】 あとて きさつたら【気障ったらしい か】 しいもんだ こいつは とんた事 をゆうや つだ御用 まあ いつて きてまた あそべ

現代語訳

さても徳右衛門方の二人の奉公人の御用は、日々得意先を回るのだが、昔とは違って今時は「御用はいかがでございますか」とは言わず、ただ前もってもう少しのところまで来て、のそりのそりと覗くだけで、それでも用は足りるのである。 幸介は、近所の美しい女性や垢抜けた娘などに「ええ子だから、いい酒を早く持ってきておくれ」と言われ、「いい酒は忘れてもええ子は」と言われたのが何よりも嬉しく、すぐに持ってくるような気立てなので、普段は威張って尻を端折っている。 家を出ても近所を離れると尻を下ろして、ただあそこの髪結床やここの自身番の縁端に横倒しになって遊んでいる。「あそこの女房は生意気だった」「ここの娘は雑だった」というような話が面白く、最近では塩辛でも食ったような声になってしまった。 「もしこの間、向こう裏の大工のかみさんが寝ていたのに、たった一つ入る布団に[?五郎さんが]寝ていて、私が行くと酒五合飲んで[私を]追い出した。その後で気障ったらしい、ひどいものだ。」 「こいつはとんでもないことを言う奴だ。御用にまあ行ってきて、また遊べ。」

英語訳

Now then, the duties of the two servants at Tokuzaemon's place involved making daily rounds to customers, but unlike in the past, nowadays they don't say "How may I serve you?" but simply approach partway, peek around lazily, and that alone suffices for their business. Kosuke, when told by beautiful neighborhood women or sophisticated young ladies "You're such a good boy, bring us some good sake quickly," and hearing "Good sake may be forgotten, but a good boy..." finds this most delightful and has such an eager disposition to bring things immediately that he normally struts around with his kimono hem tucked up. Even when leaving the house, once away from the neighborhood he lets his hem down and simply lies sprawled on the verandas of hair-dressing shops here and guard posts there. Finding stories amusing like "that woman over there was uppity" or "that girl here was slovenly," recently his voice has become hoarse as if he'd been eating salted fish. "The other day, the carpenter's wife from the back alley was sleeping, and though there was only one futon to sleep in, [someone] was sleeping there, and when I went, after drinking five cups of sake, [he] threw me out. Afterwards, how pretentious and terrible!" "This fellow says outrageous things. Well, go and do your duties, then come back and play."