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となすへき者を撰みやとふといへ共此年の夏
初見分の時従ひ行し蝦夷等帰り来て後奥地
異族の夷情悍猾の甚しき又ハ土風の異行路の難苦
なる事を語り伝へけれハ従行へしといふもの
壱人もなく彼是して日数八日の間此所に遅
滞し種〳〵の謀をなして漸く船子六人を雇ひ
八月三日此所を発船し日数十三日を経て同十五日リ
ヨナイに泊しぬるに翌十六日山丹夷数十人船六艘ニ
乗組此所に来り従夷を捕へて種々の謎言妄語をな
し奥地に至る事成かたしなと罵り且其齎し行
所の糧酒諸雑器も暴に奪ひ取んとしける故従夷は
大に恐怖のし言語ハ通せす実に施すへき策なく
よく〳〵従夷を諭して其暴意に逆せさらしめ其程
をはかりて米酒なと若干分与し其心を慰けれは
漸にして暴を止り船を出して南方に進み去りぬ
従夷其始末を察して是から南方に帰り去らんと
云出し更に奥地に進むへしと云者なかりしかは
林蔵苦心する事只ならすといへとも夷のいふ所実
に眼前の所なれは其恐怖する事其理なきとあらす
さらハとて是ゟ帰り去時ハ何時ニか奥地に至り得へ