翻刻
通宝。永楽通宝。唐土より此地へ渡りて通用せし
が。今ははなはたまれにて。只寛永通宝のも多
しとなり。
〇婦人の風俗
大家(れき〳〵)の女子は。金銀の簪(かんざし)を用ゐ。民家の婦女は。
■錩にて作りたるを挿(さす)なり其形は。上に図する
か如し。外に首飾( みのかさり)なく。脂粉(へにおしろい)をも用ゐす。髪の
毛は至て長く。背丈(せだけ)に余るとなん。歩行する
には。半襪(ざうり)を履(はき)木套(げた)を履もあり。亦 赤足(すあし)にて
歩むも有り。何れも手の指のこう甲に黥(いれずみ)す。《割書:指の節の本|に黒星を入。》
《割書:夫より爪ぎ先まてまつすぐに|黒すじを入墨にそ。》女子十五歳になれば針にて刺(さし)。
墨を入。夫より年〳〵に増加ゆる事。貴賤ともに
皆然り。三才図会に。女人は墨を以て龍蛇の紋
を黥にすと記せるは此事なるへし。当(その)時(かみ)尚益といへる
国王。女子の黥を止めんと欲し。衆を集(あつ)めて評議ありし
に。上古よりの習はしなれは。今更前制を改められんも
如何なりと。衆議(しうき)一決(いつけつ)しければ。国王も為方(せんかた)なく。其
侭にさしおきけるとなん。街(ちまた)を往来するに。尺ばかり
の布を手に持たるは。良家(れき〳〵)の女なり。衣の襟(ゑり)に紅(も)
絹(み)の縁(ゐり)を取たるは妓(たはれめ)なり。小児を抱くには。片手