翻刻
なから舞ふ.獅子は程〳〵の狂ひをなし.甚興
ある曲なるよし.これを球舞といふ.
〇小童三人.さはやかに粧(よそほ)ひて場に登り.楽人より
一尺ばかりなる.金様(きんだみ)の桿(かう)を請取り.交撃(うちあはせ)て
舞ふ此曲を桿舞といふ.
〇小童四人.手に三尺ばかりの竿に花の付たる
を.各一本宛たづさへて舞ふを.竿舞といふ.
此外舞には.扇曲(あふぎのきよく)《割書:童子六人|にて舞ふ》掌節曲(ておやらしのきよく)《割書:小童三人|にて舞ふ》などゝ
いふ舞あり.楽には.
太平調(たいへいちやう) 長生苑(ちやうせいゑん) 芷蘭香(しらんかう) 天孫太平歌(てんそんたいへいのうた)
桃花源(とうくはげん) 揚香(やうかう) 寿尊翁(じゆそんおう)
是等の外。数曲あり此内。桃花源。楊香は明(みん)
楽(がく)なり。寿尊翁は。清朝の楽なり。又神哥と
いふ物あり。日本の式三番の如く。国楽を奏
する始に。一老人の形に打扮(いでたち)。場に登りて此
曲を哥ふ。此国混沌(こんとん)のはじめ。世を御したる。
神垩天孫氏。世〳〵の国王位に登毎(のぼるごと)に。形を
現じて霊祐(れいゆう)を示(しめ)す。すなはち迎神(かみおろし)の歌を
製して。もつてこれを歓楽(かんらく)す。後世にいたりて。
神しば〳〵形を現ぜず。故に神代より遺りたる