翻刻
おまへの心(こゝろ)もしらずにわたしばかり此様(こんな)ことをいふこともないね〽ヲヤどういたしま
せうわたくしこそうれしくて〳〵いつでもお正月(しやうがつ)はうれしいと思(おも)ひますが此(この)ように
嬉(うれ)しいお正月(しやうがつ)はついぞおぼへません〽それでは外(ほか)のお正月(しやうがつ)もたび〳〵なさつたら
わたしなぞのようなお正月(しやうがつ)はおめづらしくもありますまい〽ヲヤその事(こと)ではござい
ませんいつもいたすと申たのは只(たゞ)のお正月(しやうがつ)のお正月(しやうがつ)の事(こと)であなたとこのような事(こと)
をいたすお正月(しやうがつ)はまことにもう〳〵うれしいお正月(しやうがつ)でついぞ此(この)様(よう)な事(こと)をいたしたお正(しやう)
月(がつ)はございませんからそれで此(この)様(よう)なお正月(しやうがつ)はヱヽモウなんだかわたくしにもわか
らなくなりましたアヽもう〳〵〳〵フン〳〵〳〵外(ほか)に此(この)ような事(こと)をいたした事(こと)はござ
いませんからその申わけをいたそうトぞんじてもなんだかモウ〳〵フン〳〵〳〵〳〵ぞんじ
もしない事(こと)をおつしやるからわたくしは〳〵〽ハヽヽヽヽぜうだんに言(いつ)たのだからかん
にんおしおまいにかぎつてそんな事(こと)のないといふのは知(し)つているよ〽それでもあな
たがうたがつておいでなさるかとぞんじて気(き)になつてなりません〽わるい事(こと)を
現代語訳
「お前の心も知らずに、私ばかりこんなことを言うこともないわね」「おや、どういたしましょう。私こそ嬉しくて嬉しくて。いつでもお正月は嬉しいと思いますが、このように嬉しいお正月はついぞ覚えません」「それでは他のお正月も度々なさったら、私などのようなお正月はお珍しくもありますまい」「おや、その事ではございません。いつもいたすと申したのは、ただのお正月のお正月の事で、あなたとこのような事をいたすお正月は、まことにもう嬉しいお正月で、ついぞこのような事をいたしたお正月はございませんから、それでこのようなお正月は...ええ、もう何だか私にもわからなくなりました。ああ、もうもう、ふんふん。他にこのような事をいたした事はございませんから、その申し訳をいたそうと存じても、何だかもうもう、ふんふんふん。存じもしない事をおっしゃるから、私は...」「はははは、冗談に言ったのだから勘弁しておくれ。お前に限ってそんな事のないというのは知っているよ」「それでも、あなたが疑っていらっしゃるかと存じて、気になってなりません」「悪い事を...」
英語訳
"Without knowing your heart, it wouldn't be right for only me to say such things." "Oh my, what shall I do? I am so very happy. I always think New Year is joyful, but I have never experienced such a happy New Year as this." "Well then, if you've had other New Years many times, my kind of New Year wouldn't be so rare for you." "Oh, that's not what I meant. When I said I always do it, I was talking about ordinary New Year celebrations. A New Year where I do such things with you is truly such a happy New Year, and I have never had a New Year where I did such things before, so this kind of New Year is... ah, somehow I don't understand it myself anymore. Ah, oh my, mmm, mmm. I have never done such things with anyone else, so I thought to apologize for that, but somehow, oh my, mmm, mmm, mmm. You say things I don't even know about, so I..." "Ha ha ha ha, I was only joking, so please forgive me. I know that you, of all people, would never do such things." "Even so, I thought you might be suspicious, and I can't help but worry about it." "It's wrong to..."