みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE7

風俗畫報臨時増刊第百二十四號 洪水地震被害録(上) - 翻刻

風俗畫報臨時増刊第百二十四號 洪水地震被害録(上) - ページ 22

ページ: 22

翻刻

【右側上段】   間計り崩壊(ほうくわい)したる所あり右に述へたる外に探検中(たんけんちう)秋田県及   岩手県の山腹に多少(たせう)崩壊したる処諸山に於て数百を見たり   然れとも要(えう)するに真昼山及連続 山脈(さんみやく)を遠さかるに従て減少   す  (二)[亀裂] 亀裂(きれつ)は土地の震動に依り生したるものにして其   大さ一定ならず其 方向(はうかう)は震動に対し抗抵(ていかう)少なき方位に破壊   し南北に長き山頂(さんてう)の如きは概ね其方向に亀裂を生せり又   亀裂は概(おほむ)ね真昼山及ひ連続山脈を遠(とほ)さかるに従つて減少   す (三)[被害]秋田県中尤も被害(ひがい)多き仙北郡と岩手県中被害尤も  多き西和賀郡とを比較(ひかう)するときは仙北郡の西和賀郡より被害  多きこと凡(およ)そ全潰家屋三百倍半潰家屋十七倍破損家屋五十倍  死亡九十五倍 負傷(ふしやう)十六倍其他地方の凸起亀裂 田畑(たはた)の被害或は  数十倍の多(おほ)きを見る (四)[震源の箇所(かしよ)]震源は已に述へたる如く火山性(くわざんせい)にあらずし  て地辷なるを以て震源の中心(ちうしん)と云ふへき確然(かくぜん)の箇所を知るに  難しと云へとも以上述へたる被害の景況(けいきやう)を以て察するも岩手  県の山脈にあらずして秋田県仙北郡真昼山及 連続(れんぞく)の山脈に断  層即ち地辷となり震動の区域(くゐき)尤も広まりたるものなり (五)[大地震の後の震動]大震後 余震(よしん)尚未た已まさるを以て震  災 地方(ちほう)に於て日夜恟々として堵(ど)に安(やす)んせさるの景況あるもこ  れは単(たん)に劇震の余勢にして之れ地層位置の錯乱(さくらん)を自重に依て  恢復(くわいふく)せんとするものに過きされは大震後大小の余震 時々(とき〳〵)来る  こともあるも左程(さほど)怖るゝに足らす古来地震の歴史上(れきしじやう)より考ふる  も強烈(きやうれつ)なる震動来ること至て稀(まれ)にして小なる余震に過きす濃  尾及山形震災の如きも当時劇震後十数日間 余震(よしん)ありしも初回  の如き劇震来らさりしを以て知るへし故に震災(しんさい)地方に於ては 【右側下段】  最早安堵して家屋の改築(かいちく)修繕を要するは勿論殊とに農家(のうか)に  於ては収穫季節 切迫(せつはく)の折柄夫々 収穫(しうくわく)の準備をなすこと必要な  り (六)[地鳴]強震地方に於ては遠雷(えんらい)の如き音響あり之れ地下に  空所を生し地盤(ぢばん)の自重に依りて堕落するの響波(きやうは)なることあり  故関谷博士曰く地震後は地中地上の物悉く微動(びどう)を感し物と物  と相 伝播(でんはん)して顫動を起すに由ると此の音響震動の伴(ともな)はさるこ  とあり故に音響あるかため火山 破裂(はれつ)の前兆の如く想像(さう〴〵)するは  実に杞憂(きゆう)を懐くものなりとす   右は震災地へ出張(しゆつてう)したる尾泉簡易農学校長及ひ池辺大曲警   察署長の取調(とりしら)へたる状況として県報に記したるを抜載(ばつさい)した   るものなり     ●秋田県下震災記事      ●秋田市 明治二十九年八月三十一日は二百十日の厄日(やくび)とて一般世人の警 戒を加へたる日なりしが朝来の空模様(そらもやう)何となく穏かならぬ雲行(くもゆき) を示し風甚烈にして時に激雨(げきう)あり溽暑蒸か如く数回(すうくわい)の震動あり し故 人々(ひと〴〵)安き心もなく警急(けいきう)しつゝありしか午後五時に到り俄然 強震を発し同十分に到り猛烈(もうれつ)なる地震となり見るまに屋瓦(おくぐわ)飛ひ 地軸(ちじく)裂け簸弄動揺すること波濤(はたう)の如し市民競々として恐怖を醸 し直に難を屋外に避(さ)け子女の啼(な)き號(さけ)ふ声四方に聞へて今にも奈 落の底に沈(しづ)まんと想はれ提灯を吊るし扉(とびら)を地上に敷きて家内皆 一枚の板上(はんじやう)に団座し露に湿(うるほ)ひ雨に叩かれて恐るへき一夜を徹せ り翌日に至り震動尚 歇(や)ます当日 払暁(ふつきやう)より夜に至る迄大小の震動 七十七回なりと安政大地震後四十二年間未た曾て遭遇(そうぐう)せさる劇震 にして当地方(たうちはう)には前古未曾有の大震なるべし当市の被害左の如 し 【左側】 仙北郡大曲部落の惨状【上部に横書き】 平庶郡横手大町途上避難の図【下部に横書き】