みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE7

風俗畫報臨時増刊第百二十四號 洪水地震被害録(上) - 翻刻

風俗畫報臨時増刊第百二十四號 洪水地震被害録(上) - ページ 25

ページ: 25

翻刻

【左側上段】 強首は戸数(こすう)三百〇二戸 人口(じんこう)二千百六十三人あり六ケ村(そん)の合村に して刈和野(かりわの)に近し同日の震災(しんさい)には大害なくも震動中土地分裂(しんどうちうとちぶんれつ)し て高低を生したり中より白色(はくしよく)の濁水(だくすい)を湧出す納屋ニ棟潰倒し土(ど) 藏(ぞう)は残らず壁落(かべお)ち柱のみ立ち居れり家屋(かをく)の被損は全村(ぜんそん)十分の七 なり人畜(じんちく)の死傷なきを幸とす      ●刈和野村 刈和野は商業繁栄(しようげふはんえい)の地なり仙北郡の関門(くわんもん)にして戸数五百九十 ニ 戸人口(こじんこう)三千二百四十五人あり震動(しんどう)の起りは午前九時より五六 回にして午後五 時(じ)三十 分(ふん)一 大烈震(だいれつしん)あり何れも外出(ぐわいしつ)するや否や凄 ましき震動(しんどう)をなして見るまに十六 戸(こ)の家屋(かをく)一同に転倒(てんたう)せり土蔵(どぞう) は全潰(ぜんくわい)十五棟仝半潰三十四棟の多きに至るも幸(さいはひ)に三名の負傷 一名の死亡(しぼう)のみ不幸中の幸と云ふべし其夜は皆々道路に戸板を 布き蚊帳(かや)を吊りて露宿(ろしゆく)し篝火を焼きて非常を戒めたり 〇家根(やね)より振り落さる 同村(どうそん)の土肥良吉 (二十六年)は烈震(れつしん)の際 家根の上にて仕事(しごと)を為し居りしか其震動(そのしんどう)の為め転落(てんらく)し足部に負(ふ) 傷(しやう)したりと云ふ 〇肋骨手足の打撃(だげき) 同村(どうそん)の金野サヨ (天保五年生)は老人(らうじん)のこと 故 逃(に)け後れマゴ〳〵する中 其家屋崩壊(そのかをくほうくわい)し憐れ其下になりしを以 て肋骨及ひ手足(しゆそく)を痛く打れたれども一 命(めい)を拾ひたりと 〇肛門(こうもん)より出血(しゆつけつ) 同村高橋岩蔵の孫ニ女スユノ(三年)は小児(こども)の 事とて余念(よねん)なく向ひの某方(ぼうかた)に遊ひ居りしに地震(じしん)よといふ間もな く同人の家も崩(くづ)れ向の家(いへ)も同時に崩壊(ほうくわい)したるを以てスユノは忽(たちま) ち其下(そのした)になり悲鳴を上げたるに驚き母某駈(はゝぼうか)け付け引き出(いだ)したる も背部を激(はげ)しく打たれ肛門(こうもん)より出血せること甚しかりしと無惨(むざん) といふへし 〇土地(とち)の亀裂(きれつ) 国道筋は亀裂(きれつ)を生し若くは陥落(かんらく)せし所数十ケ所 あり其震動の如何(いか)に激(はげ)しかりしを知るへし 【左側下段】      ●大曲町 大曲町は戸数(こすう)一千三百六十戸 人口(じんこう)七千三百十三人あり同地(どうち)の震 動は午前(ごぜん)より激震数回(げきしんすうくわい)あり気温は常より十度余の昇騰(せうとう)を見るに 至り人心何となく不安(ふあん)の思ひを為し居る内(うち)午后五時十分に至り 一 大激震(だいげきしん)あり其起るや殷々(いん〳〵)として遠雷(えんらい)の鳴るか如く忽ち壁落(かべお)ち 家倒れ或は傾きミリ〳〵の音凄(をとすさ)ましく老幼(らうよう)と言はす婦女(ふじよ)と言は す悉く難(なん)を道路(だうろ)或は空地に避(さ)けたり被害は寺町、勝町、米町等に て潰倒家屋七戸あり死亡者(しぼうしや)負傷者各八名 又官衙(またくわんが)も多少の破損(はそん)を 免れざりし中にも大曲区裁判所は二 階玄関(かいげんくわん)とも全部潰落したり 町民(ちようみん)は其夜は其侭路宿(そのまゝろしゆく)を為し或は鞠子川に浮べる舟中(しうちう)に難を避 けたる者も頗る多かりき憲兵屯所(けんぺいとんしよ)前の道路亀裂し榊田清兵衛氏 の蔵前(くらまへ)の地盤に亀裂(きれつ)を生して泥砂濁水を噴出すること夥(おびた)たしく 井水は悉く混濁して飲用(ゐんよう)に適せざるに至れりこの震災(しんさい)の為め囚 人をして焚出(たきだし)の仕度に着手(ちやくしゆ)せしめ監獄支署門前(かんごくしゝよもんぜん)に数ケ所の竃を 築(きづ)き徹夜米を炊き九月一日より三日まて一日壱千三百名を救護(きうご) したりと云ふ其惨状推(そのさんじやうおし)て知るへし  〇大曲町の義捐 仝町小西伝助氏より金弐百円榊田清兵衛氏より金三百円仝田口  岩蔵氏よりも金三百円又同郡内患者用として神宮寺村富樫三之助氏よりガーゼ五  反石炭酸ニ瓶硫酸ニ瓶を寄附せり      ●六郷町 六郷町は戸数(こすう)一千百〇三戸 人口(じんこう)六千〇六十四人あり劇震(げきしん)の当日 は(八月三十一日)朝来屡々(ちようらいしば〳〵)震動ありて人々 注意(ちうい)し居りしか午后 五時三十分一 声(せい)の鳴動と共に劇震(げきしん)ありしを以て各家にては夫(そ)れ 地震(じしん)た逃げよと争ふて戸外に出つるや否(いな)天地も砕(くだ)くる許りの鳴(めい) 動(どう)を発し各町の家屋 倒潰(たうくわい)し始め家々の壁(かべ)と壁と摩擦(まさつ)するより炎 々として土煙(つちけふり)を発し其光景実に凄然たり人々一旦は戸外(こぐわい)に走り 出てしも両側の人家(じんか)グワラ〳〵 潰倒(くわいたう)するより殆んど生たる心地(こゝち)