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コレクション: STAGE7

風俗畫報臨時増刊第百二十四號 洪水地震被害録(上) - 翻刻

風俗畫報臨時増刊第百二十四號 洪水地震被害録(上) - ページ 27

ページ: 27

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【左側上段】 なるかスハ地震(ぢしん)といふ間(ま)もなくミリ〳〵と凄(すさ)まじき音響(おんきやう)を発(はつ)し たるを以て直(たゞち)に庭前(にはさき)に走(はし)り出(いで)たる一刹那家屋は双方より崩れた るを以て逃(にげ)るに暇(ひま)なく傍なる楓樹に攀(よ)ちて漸(やうや)く一 命(めい)を全(まつた)ふせり と 〇池(いけ)に飛(と)ひ込(こ)む 同氏(だうし)の妻(つま)は何(い)か用事(ようし)ありて土蔵(どざう)の中にありし か鳴動(めいだう)と共(とも)に急(いそ)き土蔵を出(いで)たるに已(すで)に前面(ぜんめん)の家屋(かおく)は崩壊(ほうくわい)し土蔵 亦(ま)た壁落(かべお)ち柱折(はしらお)れ将(まさ)に傾覆せんとす四 方逃(ほうのが)るゝ 路(みち)なきを以(もつ)て最(も) 早(はや)此迄(これまで)なりと思(おも)ひたるに土蔵(どざう)の前(まい)に池(いけ)ありて此(こ)の所(ところ)のみ僅(わづか)かに 一 方(ほう)の血路(けつろ)を開(ひら)けるを以て直に池に飛込み匍匐して漸く一命を 拾(ひろ)ひたりと 〇家族(かぞく)六人圧せらる 同氏の父(ちゝ)を始(はじ)め家族下女とも六名逃け後 れ家屋(かおく)の下(した)になりしに因(よ)り家根(やね)を剥(は)き漸く之を引出したるに父 外(ほか)四名は負傷(ふしやう)せしのみにて一 命(めい)には関(くわん)せさりしも下女(げじよ)一 人(にん)は頭(とう) 部(ぶ)手足(てあし)を痛(いた)く圧せられ即死(そくし)せりと 〇家屋半(かおくなか)は埋没(まいぼつ)せらる 同村(どうそん)の長谷川間兵衛の宅は震動と共に 道路崩壊(どうろはうくわい)せしより同氏の家は半は埋没せらる 〇土蔵六棟悉く崩(くづ)る 前(ぜん)に述(の)へたる坂本氏の土蔵(どぞう)六棟は悉く崩 壊(くわい)し或は半は地中に埋没したるもあり全部傾覆(ぜんぶけいふく)したるもあり其 惨憺(さんたん)の状名状すべからず 〇邸内(ていない)の亀裂(きれつ) 同氏の邸内 悉(こと〳〵)く亀裂(きれつ)し所々に凹凸を生(せう)じ或は陥(かん) 落(らく)し或は新に高(たか)く小山を生(せう)じたる所あり池は近傍陥落の結果と して平地(へいち)に復(ふく)せり 〇真昼山の崩壊 千屋村の東方(とうはう)に真昼山とて随分高(ずいぶんたか)き山なるか 震動(しんどう)と共(とも)に各所崩壊(かくしよはうくわい)し赭山となりたる所無数なりと 〇家屋横(かおくよこ)に倒(たを)る 同村字 浪華(なにわ)の高階政五郎の宅は二三回一二尺 つゝ上下されしか其上(そのあが)る途端(とたん)橡の下の土サラハレ横(よこ)に倒壊(とうくわい)せし 状尤(ぜうもつと)き惨状(さんたん)を極(きは)めたり 【左側下段】 〇稲横に生す 震動(しんどう)の作用(さよう)にて田地の下に土地入り田地は上に 揚(あが)りたる為(た)め稲(いね)は皆横に生じ居るを見えり      ●畑屋村 畑屋村は戸数四百十戸人口二千七百八十一人ありこの村も亦被 害 甚(はなはだ)しく死亡者(しぼうしや)十七名家屋の全潰(ぜんくわい)三百八十三戸土蔵は皆崩壊し て一も残(のこ)らす其惨状(そのさんしやう)を知(し)るべし役場(やくば)は壁落(かべを)ち柱折れ全屋傾斜大 破壊(はかい)を為(な)せり因(よつ)て仮小屋にて事務(じむ)を執(と)れり学校(がくかう)も小使室を除く 外大破壊にて平蜘蛛(ひらくも)の如(ごと)し村吏の宅(たく)も崩(くづ)れ土地陥落(とちかんらく)して大穴を 生(せう)じたる所(ところ)あり 〇西宮寺の惨状 西宮寺は頗(すこぶ)る大伽藍なるか本堂及び附属の建 家残(かのこ)らず崩壊(はうくわい)して尤も惨状を極む 〇無惨(むさん)の死(し)を遂(と)く 同村高橋亀蔵氏の妻(つま)まさ(十年)は震動(しんどう)あ るや否(いな)隣家の妻(つま)某と共(とも)に逃(に)け出し今一 歩(ほ)にて戸外(こぐわい)に出(いで)んとする 一刹那俄然 家屋崩壊(かおくほうくわい)しニ 人(にん)とも其下になりしが高橋(たかはし)まさは布居(しきい) と棟木の為(ため)に挟(はさ)まれ激(はげ)しく圧せられしを以(もつ)て脳(のう)は砕(くだ)けて脳漿を 出(いで)し腹(はら)は破(やぶ)れて腸を出し其惨状見(そのさんじやうみ)るに忍(しの)びす又不 思議(しぎ)にも一 命(めい) を拾(ひろ)ひしは後より逃(に)けたる隣家(りんか)の妻(つま)にして此女(このおんな)は一人の子供(こども)を 背負(せお)ひたる侭(まゝ)一 時(じ)は倒(たほ)れたるも僅はかりの負傷(ふしやう)にて無事(ぶじ)なりと は幸(さひはひ)と云(い)ふへし 〇腸を出す 同村の高橋直吉妻しけ(三十一年)は草苅(くさかり)に出(いで)て秣(ま) 草(くさ)を背負(せおひ)たる侭(まゝ  )厩に入(い)りしに震動(しんどう)の為め家屋崩壊し同人は背中 を打(う)たれ腸を出(いだ)し無惨(むざん)の死(し)を遂(と)けたりと      ●高梨村 高梨村は戸数(こすう)四百三十戸人口二千九百二十六人あり其被害(そのひがい)畑屋 に次(つい)く家屋(かおく)の全潰は三百三十 戸半潰(こはんつぶれ)及ひ破損(はそん)は一百戸完全なる ものは一戸もなし即死者(そくしゝや)十二 人負傷(にんふしやう)十二人あり死者は概(をほむ)ね頭部(とうぶ) 脊部手足(せきぶてあし)を打撲せられて即死せっるものを多しとす