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コレクション: STAGE7

風俗畫報臨時増刊第百二十四號 洪水地震被害録(上) - 翻刻

風俗畫報臨時増刊第百二十四號 洪水地震被害録(上) - ページ 5

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す高(たか)さまで降雨量のあるものとす然(しか)れとも土地の吸収(きうしゆう)するあり 水分の蒸発(じようはつ)するあり且(か)つ凹所に流れ込むの故を以て河川(かせん)の如き は一時に増水(ぞうすい)を来し其れか為め下流(かりゆう)に於て一大氾濫を生し終に 【天気図】     八月三十日午後十時低気圧の位置              図中環状を為したる線ハ其土地に於て観              測したる時【晴カ】雨計の示度なり而して旋回              状の中央は即ち最低気圧の中心に              て大坂京都附近を襲来するところ也              其記ハ左の如し                     天 ●ハ雨 〇ハ曇                     気 【〇の中に縦棒】ハ晴 〇ハ快晴                     風 【風力記号】ハ軟風 【風力記号】ハ強風                       【風力記号】ハ和風 【風力記号】ハ烈風                     力 【風力記号】ハ疾風 【風力記号】ハ台風                      風向                      風向ハ羽の向きにより                      定む即ち風の吹き                      来たる方位を示す                      ものなり(例えば【風力風向記号】                      の如き下より上に向                      ひしハ南風にして【風力風向記号】                      ハ東風なり【風力風向記号】の如                      きハ南東風を示す 洪水(こうずい)となり親子夫妻相扶(おやこふさいあいたす)くるの暇なく遂(つひ)に水底の藻屑となる豈 に恐(おそ)るべきの至りならずや 次て八月上旬は全国概(ぜんこくおほむ)ね曇天(どんてん)にして本州中部地方は引続(ひきつゞ)き多少 【右ページ下段】 の降雨(かうゝ)あり其後(そのご)仝十六日頃より再ひ晴雨計(せいうけい)は逓減(ていげん)し午后九時過 に至り気圧(きあつ)の激降(げきかう)と共に洪雨を交へ仝十八日午前六時頃より低(てい) 気圧(きあつ)は日向灘(ひうかなた)より北方に進行し内海に入り広島呉(ひろしまくれ)(七百二十五   粍)附近を衝き山陽(さんよう)に至るや東偏して午后一時 伯耆境辺(はうきさかいへん)よ   り日本海に北進(ほくしん)せり降て仝月廿八日午前六時には本州東海(ほんしうとうかい)   に第三の低気圧(ていきあつ)を現出したり是に於て吾人(ごじん)は毎歳心労(まいさいしんらう)せる   二百十日 (厄日)も接近(せつきん)したるを以て一層(いつそう)之に注意せしに   天候は益々険悪(ます〳〵けんあく)となり仝三十日午后二時に至り俄然晴雨計(がぜんせいうけい)   の急降を始め不穏(ふおん)の兆 顕(あら)はれたれば暴風雨(ぼうふうゝ)の警戒は間断(たえま)な   く発せられたり仝六時后 低気圧(ていきあつ)の中心は紀州汐岬(きしゆうしほみさき)に襲来し   仝夜十時頃 大和(やまと)の中央より大坂京都間(おっほさかけうとかん)に突進し遠慮会釈(えんりよえしやく)も   なく旋回状の風は荒(あ)れに荒れて豪雨(ごうゝ)尚ほ甚しく大坂(おほさか)に於て   最低気圧(さいていきあつ)七百二十六粍を示せり次て翌(よく)三十一日午前四時頃   暴風(ぼうふう)の中心は日本海(にほんかい)に向ひ能登の北端(ほくたん)を過き仝五時 佐渡(さど)を   経て北海道寿都附近(ほくかいどうすツつふきん)に馳走せり仝日午后に至り稍々平穏(やゝへいおん)に   復したるを以て仝三時五分 警戒(けいかい)を解かれたり今 茲(こゝ)に三十日   午後十時の低気圧襲来(ていきあつしうらい)の模様(もよう)を図し以て其概況(そのがいけう)を示さん   又茲(またこゝ)に七、八両月間各地の雨量表(うりようへう)を示さん   岐阜(ぎふ)の如きは二ヶ月間に二丈九尺余の雨量ありしが殆(ほと)んど   其半分(そのなかば)は第一表中に示すが如く四日間に一丈三尺余の多量(たりよう) を降せしなり尚(な)ほ此表中遺憾(このへうちうゐかん)と思ふは水害(すいがい)甚しき県下(けんか)にして報 告なきこと是(これ)なり此(こ)は他にあらず其測候所(そのそくかうじよ)の洪水に浸犯せられ たるものと測候所開始前(そくかうじよかいしぜん)のものあるに係る即ち滋賀(しが)測候所の如 【左ページ上段】 きは災害(さいがい)尤とも甚しと云ふ又(また)福井、茨城、埼玉、兵庫、群馬等 は建設中(けんせつちう)なりとの事なり      七、八月雨量総計  測候所名  雨   量   測候所名  雨   量   測候所名  雨   量          尺             尺             尺 岐阜県岐 阜 二九、二六五 北海道函 館 一四、一二四 島根県浜 田 一〇、六六二 徳島県徳 島 二一、七七七 福島県福 島 一三、七九四 北海道寿 都 一〇、六五九 石川県金 沢 一九、八九三 長崎県佐世保 一三、七六四 静岡県沼 津 一〇、三八六 高知県高 知 一九、四七六 和歌山県和歌山一三、三一四 岡山県岡 山 一〇、二二七 京都府京 都 一九、三九八 山口県山 口 一二、四三五 栃木県宇都宮 一〇、一〇一 青森県青 森 一八、〇六九 香川県多度津 一一、六六一 広島県 呉   八、三四六 岩手県宮 古 一七、七〇〇 山形県山 形 一一、七七二 北海道上 川  八、三一三 三重県 津  一六、八〇〇 熊本県熊 本 一一、六四〇 広島県広 島  八、二八六 鳥取県 境  一六、二九三 長崎県長 崎 一一、五八九 静岡県浜 松  八、〇三四 鹿児島県鹿児島一六、〇二六 北海道札 幌 一一、五一四 神奈川県横須賀 七、九八六 大坂府大 阪 一六、〇二三 大分県大 分 一一、〇二八 東京府東 京  七、二五一 宮崎県宮 崎 一五、五三七 岡山県味 野 一〇、九〇八 北海道根 室  六、〇三九 富山県伏 木 一五、〇七二 長野県長 野 一〇、七六四 千葉県銚 子  三、四九八 愛知県名古屋 一四、五八九 北海道釧 路 一〇、七一九 福岡県福 岡 一四、五四七 新潟県新 潟 一〇、六九五 第二の災厄日二百廿日 (九月十日)は如何(いか)にと思ふ間(ま)もなく九月 七日 午後(ごゞ)二時に至り全国(ぜんこく)の気圧(きあつ)は著しく下降(げかう)を呈し降雨は本邦(ほんぱう) 中部(ちうぶ)一 体(たい)に瀰満せり是れ即ち第四の低気圧現出(ていきあつげんしゆつ)にして彦根地方(ひこねちほう) の如きは降雨(かうゝ)二十四時間に六百八十五粍 (我二尺二寸六分余)の 多量(たりよう)に達せり尚(な)ほ十日に至るも大雨は未(いま)た歇(や)まず次第(しだい)に甚しく 降(ふ)り来り仝日 午後(ごゞ)二時低気圧の中心(ちうしん)は四国南岸(しこくなんがん)に突進し十二日 午前六時には播丹両州附近(ばんたんりようしゆうふきん)より佐渡沖に出て北東(ほくとう)に向ひ北海道(ほくかいどう) を襲撃(しうげき)し仝月十八日に至り連日降続(れんじつふりつゞ)きたる暴雨も全く霽【晴】れ上り 【左ページ下段】 たり此両月間降雨多量(このりようげつかんかうゝたりよう)なりしを以て終(つひ)に東京(とうきう)の東北隅も数(すう)十 年(ねん) 来曾(らいかつ)て見ざるところの一 大洪水(だいこうずい)と為れり降雨多量の害亦畏(がいまたおそ)るべ き哉      ●荒川筋の浸水   明治(めいぢ)二十九年七月 以来各地方(いらいかくちはう)より洪水の報連りに至りしが   東京府下は幸(さいはい)に無異(ぶゐ)なりしに九月に入りて暴雨屡々(ばうゝしば〳〵)至り   遂(つひ)に他と同しく洪水の大害(たいがい)に遭遇(そうぐう)せり今其の順序(じゆんじよ)を遂ふて   荒川筋(あらかわすじ)の浸水(しんすい)より起筆すべし 秋潦連旬 濁流滔々(だくりうたう〳〵)として堤を毀(こぼ)ち丘(きう)を壊り荒川、多摩川等の河 流に瀕(ひん)せる各低地は青田忽(せいでんたちま)ち蒼海と変じ竹叢樹林は民家(みんか)と共に 僅(わづ)かに其一 半(はん)を水面に現はして点々相対(てん〳〵あいたい)し遠く望めば群島(ぐんとう)の如 く奇岩(きがん)の如く浮萍(ふひやう)の如く難に遭ふの人民は高処(かうしよ)に上り舌を爛(たゞ)ら し声を嗄(か)らして涕泣(ていきう)するあり叫号(きうごう)するあり顔色憔悴として飢渇(きかつ) を忍び救助船(きうじよせん)の来るを今か今かと待ち居れる容子(ようす)は見るも愍然(あわれ) の次第なり其荒川筋(そのあらかわすじ)に於ては北豊嶋郡のみにても浸水家屋(しんすいかをく)六百 八十三戸難民三千百六十六人に達(たつ)し岩淵、王子、千住等の町村(ちやうそん) 被害最(ひがいもつと)も甚しく南足立郡に於ても江北村、向千住等の被害亦(ひがいまた)北 豊島郡に譲(ゆづ)らず其下流(そのかりう)は即ち大川筋にして墨田堤下(すみだつゝみした)の小松園、 桜組製靴所を首として其以南(そのいなん)の吾妻橋向ふなる佐竹邸の前通(まへとほ)り は一円 浸水(しんすい)して床上(しやうじやう)に及び怒濤(どとう)は河の左岸に溢(あふ)れて道路を没し 直(たゞち)に走りて新永代橋 架設(かせつ)の為めに仮構(かこう)したる足場(あしば)十五六間を流 し終に品海(ひんかい)に奔注(はんちう)す中に就て最も都人(とじん)の心胆(しんたん)を寒からしめたる は激流(げきりう)北葛飾郡三輪江村大字二階新田地先堤防を壊決(くわいけつ)したるの