翻刻
地(ち)の図(づ)を以知るべし又天は円(まろ)く方(けた)と云こと地の円(まるき)を知らずして云
にあらず見る処地は平(へい)也天は円く見ゆる今日此|土(ど)に居て云処は
天は丸く地は平(たいらか)に方(けた)十方万国へかけて大(おゝひ)に其|形姿(すがた)を求(もとむ)る時は
地はいつも円しされば地を方(けた)と云は見る所の上にて云扨天は丸き
地の外を廻(めぐ)り覆(おほ)ふ故(ゆへ)に鶏卵(けいらん)の黄白(はしはし)を以て譬(たとへ)たる也其天
の動(うご)き周旋(めぐ)る気に包抱(つゝま)れて凝(こり)ある地なれば上下十方ゟ
気の為に中(ちう)に釣られたるものゆへ何れの方へ落(おつ)べきや又地
は気(き)の渣滓(うす)の凝(こ)る濁陰(だくゐん)にして水と土と也水は土中(どちう)脈(みやく)筋を循(じゆん)
環(くわん)し外は海河(かいが)地|毬(きう)をめぐり〳〵て端なし見る所地は方(けた)なれ
ども数百里の内に少しづゝ段々下りにして終(つい)には円なる地|毬(きう)
ゆえ見る時は何万里|海(うみ)を行(ゆき)てもいつも水は平(たいらか)にみゆるごとく
なれば俄(にわか)に瀧水(りうすひ)のごとく落(おつ)べき理もなし水は地毬(ちきう)につくく
丸きかたちに流れ周(めぐり)て万国に程よく行渡(ゆきわた)る是|自然(しぜん)の勢(いきほい)
也又|地毬(ちきう)九万里と云|或(あるひ)は紅毛(おらんだ)に五千四百里日本の測(そく)は壱万
八千三百余など云其外|異朝(いてう)代(よ)々の暦志(れきし)測量(そくりやう)区々(まち
)也
但し天の一度地にて直算(ちよくさん)二十五里道の険曲(けんきよく)を積合(つもり)て三十余りとす是にて得べし
○日
問て云日は毎日(まいにち)東より出て西に没(ぼつ)す其|大(おゝき)さ周回(めぐり)千四百
九十余万里と云是又諸|説(せつ)まち〳〵にて異同(いどう)有いづれ陽気(ようき)
の凝(こつ)て形象(かたち)を成(な)すものと見ゆ其理いかん
答て云|開闢(かいびやく)の時|陰陽(ゐんよう)昇降(のぼりくだり)て天地となる其|二気(にき)の
至精(しせい)こつて日月の形(かたち)をなし天の周旋(めぎり)に牽立(ひきたて)られて
ともに周旋(めぐり)て終古不易(しうこふゑき)也日は陽精(ようせひ)の凝(こ)れるものゆへ其|形(かたち)
毬(まり)のごとき一|団(だん)の塊火(くわいくわ)也春夏秋冬これによつて立(たつ)宇宙(うちう)
の万物太陽の徳に預(あづか)らぬはなし暦書に日|輪(りん)天を行(ゆく)の道を
横道(わうどう)と云は宏太(くわうたい)の天に行道(ぎやうどう)する日月を下地(かち)より測(はか)ることゆへ