翻刻
強(しゐ)て其道を分(わかち)名付て先(まづ)南北二|極(きよく)を左右(さゆう)に見て天の中半(なかば)
東ゟ西へ一|文字(もんじ)にわけ此道を赤道(しやくどう)と云|日行(につこう)の道を横道(わうどう)とし
月行の道を白(はく)道と云是|限(かぎり)なき天を下ゟ窺測(きそく)する標的(めあて)
といふもの也其|渾天(こんてん)の形象(けいしやう)を器物(きぶつ)に模(うつ)したるが渾天(こんてん)
儀(ぎ)なり扨日|輪(りん)日々東ゟ昇(のぼ)り西に降(くだ)る内に夏は赤道(しやくどう)の北に
めぐり冬は南に行(ゆき)春秋(しゆんしう)二|分(ぶん)は赤(しやく)道によつてめぐる毎(まい)日其|道(みち)
異(こと)也古(いにしへ)の聖人(せいじん)四|時(じ)の日行(につこう)を測(はかり)民(たみ)に時を授(さづ)け稼穡(かしよく)の
節(せつ)を違(たがへ)ざるを政要(せいよう)とし給ふ書経(しよきやう)堯典(ぎやうてん)等に出たるを以(もつて)知る
べし又|舜(しゆん)璇璣(せんき)玉衡(きよくこう)をあきらかにして七|政(せい)をとゝのふと
あるは天の姿(すかた)を写(うつ)せる器物(きぶつ)を以て日月五星の行度(かうど)を
違(たがへ)ず四|時(じ)をとゝのふこと也循環委曲(しゆんくわんいきよく)の決(けつ)は暦書に需(もと)
むべし又日|輪(りん)の大(おゝい)なる事日本にて見ても万余里の
紅毛(おらんだ)に至(いたつ)て見ても異(こと)なることなし西川|先生(せんせい)の天学名(てんがくみやう)
目鈔(もくしやう)に日月五星大小の弁(べん)あり
○日の出入(でいり)大(おゝい)に見ゆる
問て云 日|輪(りん)出入の
時は形(かたち)大くして暖(あたゝか)
ならず 日中(につちう)は暖(あたゝか)にして
却(かゑつ)て日の形|小(ちいさ)し 童子
其遠近を争(あらそ)ひし
こと諸書に出たり
此|実理(じつり)いかん
答て云 或(ある)書に日の
出る時は地より十七
万余里日中は地より
十五万余里出る時は
日
童子日の遠近を論ぜし
といふこと列子にも出たり
尤|寓言(くうげん)なり