翻刻
光なき半面(はんめん)を見るゆへ光なく形(かたち)もみへず三日の比(ころ)日(ひ)先(まづ)入て月は
おくるゝゆへ地より見れば月光を斜(なゝめ)に見る七八日の日に至(いたつ)ては
日月|漸(やうやく)隔(へだゝ)るゆへ半月を見る朔(さく)と望(ぼう)望と晦(くわい)の中半(ちうはん)を上下|弦(げん)とす
西に没(い)る日の光をうつるゆへに上十五日は西に光あり扨月の中半(なかば)に
至(いた)れば天度(てんど)の中半(なかば)に日月隔り対(むか)ふたとへば日は西に没(ぼつ)し月は
東に出るがごとく此時日|光(くはう)を正面(しやうめん)よりうくる月を人は地上に
在て見るゆへ満(まん)月を見る夫よりまた日と月と近づくに随(したがひ)
月はいよ〳〵|虚(かく)る下|弦(げん)をへて月|末(ずへ)に至て日月|同度(どうど)に近付
を晦(くわい)とす又地ゟ光を見ることなし是月はいつも日のあたる方は
満(まん)月なれども日と月と近ければこと〳〵く空の方へ光を発(はつ)し
向(むかふ)と向(むか)わざるとによつて人の方にのみ盈虚(ゑいきよ)を見ると云もの
なり満(まん)月の後(のち)は東方|旭(あさひ)をうけて光る月ゆへ西の方に光なし
唯(たゞ)日のある方に従(したか)ふのみ然(しかう)して月は陰(ゐん)の宗(そう)にして一切(いつさい)の陰(ゐん)
類(るい)したがつて栄枯(えいこ)すなを潮汐(てうせき)の釈(しやく)に述(のぶ)る処|末(すえ)に出たり
○満(まん)月十五夜に限(かぎ)らず
問て云月の半(なかは)に日と
月と対向(たいかう)して満月を
なす然るに十五日の月
すこしく飯櫃(いびつ)にして
或(あるひ)は十六日又はすゝんで
十四日に満(まん)月ある此理
はいかん
答て云月の満(みつ)る時を
望(ぼう)と云|望(ぼう)は当月の
朔(さく)と来月の朔(さく)との中(なか)
月の清輝(せいき)秋は
金気の天なれは
他(た)の月に勝(すぐ)るゝゆへ
和漢(わかん)仲秋|最中(もなか)
を賞(しやう)す