翻刻
問て云日月は陰陽(ゐんよう)の精(せい)の凝(こ)る所也と星は何(いか)なるものぞや
其|数幾(かづいく)千となく天に列(つらな)り且(かつ)大なる有小なる有|一星(いつせい)を一座(いちざ)
とし数星(すせい)を一座とする有又云星の大(おゝい)なること日月にこえ
たれども其天高くして却(かえつ)て小(ちいさ)見ゆるといよ〳〵然るや
答て云|史記(しき)天宦(てんくわん)書に三|光(くはう)者(は)陰陽(ゐんよう)之(の)精(せい)と出|乾天(けんてん)坤地(こんち)
開闢(かいびやく)の時陰陽の精(せい)日月となり天の五行(ごぎやう)は五|星(せい)となり地の
五行は水火木金土を生(しやう)ず五星は木星歳星火星|螢惑(けいわく)土星|填星(ちんせい)
金星|太白(たいはく)水星辰(しん)星又五|緯(い)の星と云は五星は南北の緯行(いこう)有
がゆへ也|緯星(いせいは)五行(ごぎやう)之(の)精(せい)五|星(せい)合(がつす)_二於五|行(きやうに)_一とも見へたり古人(こじん)
衆星(しうせい)を以て金(きん)の散気(さんき)とす五星は其かゝる所|高下(かうげ)各(おの〳〵)異(こと)にして
行道(ぎやうとう)の遅疾(ちしつ)又|別(へつ)なりともに東ゟ西へ転(てん)じて日月のごとく
南北の行(こう)有|或(あるひ)は晨夕(しんせき)伏見(ふくけん)す衆星(しうせい)は天に布(しき)みちて南極(なんきよく)北辰(ほくしん)
を以て枢軸(すうじく)とし東ゟ西に転(てん)じて南北の行(かう)なしよつて経星(けいせい)
恒星(ごうせい)とも云|然(しかう)して太微(たいび)紫微(しび)天市(てんし)上中下の三|垣(ゑん)天子(てんし)百|官(くわん)
等を以て星に命(めい)じ二十八宿又二十八|舎(しや)とも云て天を窺測(きそく)
する標的(へうてき)となるべき星を二十八座|衆星(しうせい)の内より命じて
其|分野(ぶんや)を定めて広(くはう)大の穹天(きうてん)を巨細(こさひ)にす衆星に至(いたつ)ては
其数|無量(むりやう)にして数尽(かそへつく)すべからず晋志(しんし)三百八十三|官(くはん)二千
四百六十四星云々すべて衆星(しうせい)のかゝる所日月の天よりは
甚高く其|大(おゝい)なること測(はか)るべからず皆(みな)天(てん)につゐて旋(めぐ)るゆへに
宵(よひ)に東に見たる星は暁(あかつき)西にあり又|半天(はんてん)地下(ちか)におゝひ廻(めぐり)
て見へぬ方にも星は列(つらな)りあるがゆへに今夜(こんや)半天(はんてん)の星みへ
明日は半天の星|白昼(はくちう)に天(てん)の方へめぐり沈(しづみ)てみへざる有
夏見ざる星冬に至(いたつ)て見る有こと〴〵く天(てん)の周旋(しうせん)に依(よつ)て
なり猶|天漢(あまのがわ)の説(せつ)末(すえ)に出すごとく又|星体(せいたい)尤大小|不同(ふどう)有也