翻刻
答て云是も又|同(おな)じ類(たぐ)ひ也其|気(き)結(むすぼ)れ凝(こ)ること厚(あつ)くして
俄(にわか)に散(さん)ぜずして天に附(つく)もの也其鋒(ほこ)の如き形(かたち)をあらわすを
芒(ぼう)と云|暁(あかつき)東方に見るは芒(ぼう)西にさす夕(ゆふべ)西に見るものは
芒(ぼう)東にさす是日のある方よりさすゆへ也 形象(かたち)長きもの
を彗(けい)【左ルビ「すい」】と云|形(かたち)大なるを孛(はい)と云しかれ共|衆(しう)星のある所よりは
大にひくし此ゆへに万国ともに見るにあらず其|気勢(きせい)衰(おとろ)へ尽(つく)
る時は頓(やが)て滅(めつ)す百日に過(すぐ)るものなしといへり下地(かち)の燥乾(そうかん)の
気(き)を升(のぼ)して天(てん)に現(あらは)るゝものゆへ火災(くはさい)旱魃(かんはつ)等を以て
其|応(おう)とす皆|陰陽(ゐんよう)の変(へん)也此ゆへに和漢(わかん)妖蘖(ようげつ)の尤(けやけ)き物
として敬懼(けいく)す
○天漢(あまのがわ)
問て云|天河(あまのがわ)の諸説(しよせつ)區(まち〳〵)にして或(あるひ)は天の清気(せいき)とし又は水気(すいき)天(てん)に発(はつ)
昇(しやう)して其|精(せい)天河(てんが)となると云又|云(いわく)牽牛(けんぎう)織女(しよくぢよ)の二星(じせい)七月七|夕(せき)
銀漢(あまのがわ)を渉(わたり)て会(くわい)す
此夜少も雨|降(ふ)る時は
漢河(あまのかわ)の水|増溢(ぞういつ)して
渡ること叶ずと唐土(もろこし)
代々の詩(し)人も是を
賦し我が朝(てう)の哥仙(かせん)
も是を詠(えい)ぜり牽(ひ)
牛星(こほし)は河鼓星(かこせい)を
云と此理いかん
答て云|史記(しき)天官(てんくわん)書
に漢者(かんは)金之(きんの)散気(さんき)
と出|物理論(ふつりろん)に星は
元気(げんき)の英(ゑい)漢は水の精(せい)なりと然るに暦家(れきか)には微星(びせい)の多く隠れて
天漢(てんかん)【左ルビ「あまのがわ」】
荊楚(けいそ)歳時記に二星の
聚会を出せり日本ニては
孝謙帝天平勝宝七年
乞巧奠(きつこうでん)はじまる也