翻刻
一日に天度(てんど)を退(しりぞ)く事十三|度(ど)有奇(あまり)也二日には二十六度|余(よ)と段々
退(しりそい)て二十九日五十三|刻余(こくよ)にして日と会(くわい)す是を合朔(がつさく)として
一ヶ月とす此一ヶ月の数(すう)十二|合(がつ)すれは三百五十四日三十七刻なるが
ゆへ月の一年の数と云一ヶ月の数|定数(ていすう)三十日に不足(ふそく)する事
四十六刻九十四分|有奇(あまり)是一月の虚分(きよぶん)にして十二ヶ月を積(つん)で
五日六十三刻|有奇(あまり)を一ヶ年の朔虚分(さくきよふん)とす前(まへ)の気盈(きゑい)に合して
十日八十八刻|余(あま)る是を一年の閏余(しゆんよ)とし三年|積(つん)で閏(しゆん)月を置(をき)
いまだ余分(よぶん)のこる五年にして再閏(さいじゅゆん)を置(をき)十九年の間に七ッ閏(うるふ)
を置(をい)て過不及(くわふぎう)なしかく閏(うるふ)を置(をか)ざれば四|時(し)とゝのふことなく
寒暑(かんしよ)の候(こう)差(たか)ふがゆへ也
○運気(うんき)
問て云|運気(うんき)を考(かんがへ)て預(あらかじ)め水災(すいさい)火難(くわなん)を知り或(あるひ)は風雨曇(ふううどん)
晴(せい)を察(さつ)すること其理いかん
答て云|運気(うんき)の説(せつ)は往古(わうご)黄帝(くはうてい)と岐伯(ぎはく)鬼愈匣(きゆく)等(とう)の信と
の問答(もんどう)素問(そもん)に出たり其|荒増(あらまし)五|運(うん)と云|気(き)とにつゐて考(かんがふ)る故(ゆへ)
運気(うんき)と云也|甲(きのえ)の年を土運(どうん)太過(たいくわ)とし。己(つちのと)の年を土運(どうん)の不及(ふぎう)とし
庚(かのへ)金運(きんうん)太過(たいくわ)。乙(きのと)金運|不及(ふきう)。丙(ひのえ)水運(すいうん)太過(たいくわ)。辛(かのと)水運不及。壬(みづのへ)木運(もくうん)
太過(たいくわ)。丁(ひのと)木運不及。戊(つちのへ)火運(くわうん)太過。癸(みつのと)火運不及とす所謂(いわゆる)五|運(うん)は
是也十|干(かん)より出る六|気(き)は厥陰風木(けつゐんふうぼく)。少陰君火(せうゐんくんくわ)。少陽相火(せうようしやうくは)。太陰(たいゐん)
湿土(しつど)。陽明燥金(ようめいそうきん)。太陽寒水(たいようかんすい)。是也然るに春|温(あたゝか)に夏|暑(あつく)秋|涼(すゞ)しく
冬|寒(さむき)は常(つね)の気(き)にして主(しゆ)人のごとくなるゆへ是を主気(しゆき)と云其
年々の十二|支(し)に従(したがつ)て行(おこなわ)るゝ気|異(こと)なるを客(きやく)人の来るごとくなるに
なぞらへ是を客気(かくき)と云|寒暖(かんだん)風雨(ふうう)の変(へん)は此|客気(かくき)より出来る
ゆへ主気(しゆき)各気(かくき)の組合(くみあわ)せを能々(よく〳〵)考(かんがへ)合すること也|運気(うんき)の一年は
前(ぜん)年十二月の中(ちう)大|寒(かん)の日ゟ当年十二月の中大|寒(かん)迄三百六十五日
二十五|刻(こく)の間也六|気(き)に分(わかつ)て一気(いつき)各(おの〳〵)六十日八十七刻三十分|宛(づゝ)に主客(しゆかく)