翻刻
其時のことを知りたるや深(ふか)く穿鑿(せんさく)せば際限(さいげん)あらじ和漢(わかん)の書
太素往昔(たいそわうせき)を説(とく)に形象(かたち)を仮(かり)て理(り)を述(の)べ人事(じんじ)を以て造化(そうくは)を語(かた)ること
少なからず疑(うたがは)しきことは欠(かく)とも可(か)ならんすべて既往未然(きわうみぜん)を知ること
皆今日の理を推及(おしおよぼ)して察知(さつち)あること也|論語(ろんご)に子張(しちやう)十|世後(せいのち)の
こと知らるべきやと問(とい)しに聖人(せいじん)却(かゑつ)て既往(きわう)を語り百世の後も知る
べしと答え給ひしを以て思ひ見るべし
○天
問て云天は円(まとか)にして上に覆(おほ)ひ其|形(かたち)弇(かさ)を俯伏(ふせ)たるごとし遠く望(のぞ)
めば其色|蒼(あを)し是を空と云空の上にも又天ありや或(あるひ)は天の
里数を云もの廻(めぐ)り百八万余里|経(わたり)三十五万余里など云其里数も
諸書|区々(まち〳〵)にして一|定(てい)せずいかん
答て云太極わかれ清陽(せいよう)天となりしより其|形円(かたちまる)くして毬(てまり)の
ごとく又|鶏子(たまご)の白(しろみ)のごとし地は包(つゝま)れて鶏卵(たまご)の黄(きみ)の如きもの也人は
地上に在(あつ)て天の中(なか)
半(ば)上に覆(おほ)ひたるを見
て下に覆ひたる中半は
見ずといへ共天は陽(よう)に
して動(うひ)くなれば昼夜(ちうや)
運旋(うんせん)して止(やま)ず左迂(させん)
とて東ゟ西へめぐる故(ゆへ)
宵に東に見へたる星
は暁(あかつき)西にあり是天
に現(あらは)るゝ星の天|運(うん)に
引立(ひつたて)られてめぐる也天
の大なるや万国(はんこく)を覆(おほ)ひ幾(いく)万里を知ることなし凡(およそ)天と云時は地より上(かみ)
蒼天(あをぞら)迄目の及ぶ所は皆天也よつて天を十|重(え)とし又は九|重(ぢう)に名づけ
此国昼なれば
下の方にあたる
国は夜なり
人地上に
あつて
天の
中半
を見
て下へ
廻る方
の半天は
見へさること
此図にて知るべし