翻刻
まぢりあはてふためき逃惑(にげまど)ふうち数(す)ヶ所より出|火(くわ)
□□炎(ほのふ)天をこがし地震の火気もくはゝりて白昼(はくちう)□
如し其(その)混雑(こんさつ)譬(たと)へるに物なし上を下へとかへす故(ゆへ)
人は人に踏倒され壊れかゝる棟(むなぎ)や宇(のき)に打ひしがれあるひは
烟(けむ)りにとりまかれ死亡(しほう)するもの数しれす君臣も離散(りさん)
し親兄弟(おやきようたい)を見失ひ妻子に別れ存亡(そんほう)いかにと
呼(よび)かはし泣(なき)さけぶ声(こへ)のみか火に攻(せめ)られてくるしむ
声四方にみちて喧(かまびす)〳〵 修羅(しゆら)の陌(ちまた)を眼(め)の前(まへ)に
見るより哀(あわれ)の有さまなりかゝる非常(ひじやう)の大|変(へん)其(その)
前表(ぜんひやう)なきにしもあらず今年は冷気(れいき)いやます□に
殊(こと)の外(ほか)あたゝかにして梅桃大かた返り咲九月下旬|空(そら)
低(ひく)く星大きく顕(あらは)れ又は所々に水|涌(わき)出|其外(そのほか)怪(あや)敷
事ども多し心有人々は只事ならずと眉(まゆ)をひそめ
歎息(たんそく)せしがはたして此凶(きよ)事あり桜は實を結(むす)ふ
こと軽き故二度咲もまゝ有べし桃(もも)李(すもゝ)は秋近く迄
実(み)を保(たも)つものなれば桃の返り咲はあやしむべきの
一ツなり天地|開闢(かいびやく)以来の大地震は白鳳年中□□
半国|減(げん)し伊豆の嶋裂けて八嶋となりしときは