翻刻
〇元文四己未年八月大大雷所々へ落雷火にて人死多し
〇寛政十戊午年山城大雷京都大仏雷火
〇嘉永三庚戌年八月江戸大雷百余ヶ所に落雷火所々
より焼(やけ)あがり其響すさましきこと言語(ごんご)に絶(たへ)たり震雷
ともに陰陽(いんやう)の功用(はたらき)なれは怪異(くはいい)のくはゝる事も有へし凡
性(しよう)情あるもの人間は勿論いかなる猛獣(もうじう)も大雷にはふかく恐(おそ)
るゝなかに雷獣(らいぢう)雷|鳥(てう)あり「しら山の松の木陰にかくろひて
やすらにすめる雷の鳥かな夫木抄にもみへたりまた
雷獣はふだん弱(よは)々しきものなれども雷鳴のときは
其猛きこと龍虎(りやうこ)にひとしく風を起(おこ)し雲をよび自在(じざい)を
得たり雷は陰(いん)の凝(こり)たる黒気(こくき)地上に顕(あら)はるゝ時|土龍(もぐら)の如く
所々高くふくれあがり終(つい)に地を發(おこ)して天上に
至る時は木の枝竹の枝何くれとなくさわるものを打切る
勢(いきお)ひ鉄砲(てつぽう)の如し雲中にいると間もなく散(さん)して音を
なす其烈しきは浮雲(ふうん)を破りて地に落是に強弱(きやうじやく)有
弱(よは)きは土蔵|瓦(かはら)屋を打ぬき天井(てんじやう)にて止(とど)まり其|強(つよ)きはの
大石大木といへども微塵(みじん)に砕(くだ)く強弱ともに人の背
に落ちかゝらは粉(こ)の如くならん勢ひ抜群(ばつくん)のものにて