みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE1

震雷考説 全 - 翻刻

震雷考説 全 - ページ 22

ページ: 22

翻刻

せよ神|威(ゐ)もくはゝるものなれは刃物にて雷難を除くなど□ 覚束(おぼつか)なし 〇天保二辛卯四月下旬信州善光寺より須坂(すさか)に至(いた)る時 塩(しほ)川村をすぎて細(ほそ)道にかゝりけるに雨いよ〳〵|強(つよ)く 瀧(たき)の落るか如し案内(あんない)かた〳〵分持(ぶんもち)をもたせし人歩(にんぶ) 先にたち三人道を急ぐ処に此日は雨のみにて雷気は 少しもあらざりしに光ると倶(とも)にどうと落たり其|響(ひびき) 大地を打ちかへせしと覚へ人足も僕(しもへ)も打|倒(たほ)れやつかれも思 はずしらず傘を取落とす真黒になりて物のあいろも わかず只|焔硝(へんしよう)の匂(にほ)ひして気血脳乱(きけつのふらん)する事はな〳〵し 両人を呼(よ)べどもさらに答(こたへ)なけれは即死(そくし)やせしとあやし む内猶々雨強く懐中(くはゐちう)ものまて一しぼりとなるほどに 暫(しばら)く有て両人やゝ性気つきけれども夢中の如し拠(よんどころ) なく荷物を捨(すて)おき須坂(すさか)までかけ付とりつきの茶屋(ちゃや)へ駈(かけ) 込み人をやとひ荷物をとりよせ改めみれば分持の桐油(とうゆ)剃(かみ) 刀(そり)にて切たるごとく一文字にきれ取落(とりおと)したる傘(かさ)の 端(はし)三寸程かけて壱尺あまりはさみ切たる如し是(これ)則(すなはち)釼に 当りたるならん危(あやうい)哉(かな)一足|遅(おそ)くは人歩はゆくはやつかれ即死