翻刻
ずといへども戦場(せんじゅやう)の城(しろ)攻にくらべばいかゝ塀|櫓(やぐら)の崩(くづ)□□落□る
□をくゞり矢玉を凌(しの)きて火の中へ切込み高名手からする
とかや地震は一旦に倒れかゝるものながら人を尅(こく)する性(せい)
情(じやう)なし矢砲(しほう)は素(もと)より人を殺(ころす)す器(き)なりさあれはこれを
避るより安かるへし尤悪文の圧(おし)しかれたるを見て心|臆(おく)する
ものは有ましけれと非常のとき一心|豪傑(がうけつ)るれは地気の毒
もうけず火きさへよきるものときけは勇気を励(はげ)ます事
肝要(かんやう)也只何事も後(こふ)悔に似たりといへども年月を歴(へ)る
うちにかいづれの時天|変(へん)地変あらんもはかりがたき故後々の
心得のため壮(そう)年の頃|西東(そちこち)を吟(さまよ)ひ所々にて見聞処と昔より
の云傳へと符合(ふごう)せし震雷のこと其外のことまてかひつまみ
且(かつ)は此度の状(ありさま)つぶらに書とめ筆を止(とど)むる折から横死(おうし)十万
余と聞へたり夫程まてとは思わざりしに地震の大小(ほ□□らい)はいざ
しらず死亡の多き事前代未聞なり繁華(はんか)の地にて人(にん)
数(ず)多き故なるべし家蔵を失ふのみは一統の事にして
歎(なげ)くにたらず奴僕(ぬぼく)たりとも非命の死あらばいかに気ざはり
ならん兄弟妻子を失なはゞ生残(いきのこ)る甲斐(かい)なき心地(こゝち)せん
況(いはん)や美文にあやまちあらば生涯(せうがい)は勿論中々に末代まての