翻刻
黒し爪五本ありて甚たくましく先年
岩付に落たる雷獣ハ大躰今年のに似
たりといへども胴短く色灰白色なり唐
の書にも往々見たれどもいづれともた
がい多し唐の《ルビ:狄仁傑|てきじんけつ》がかたち人に似て
殊に人語をなセしといへり又李肇が
国史補に日雷州に雷獣多し其かた
ち人に似て人是をとつて食ふといへり
捜神記にハ雷のかたち獅猴に似て
色赤といへり我国にも土佐の国にハ
春夏の比山中にて雷ノ獣を討取食ふ
其味《ルビ:星鮫|ほしさめ》のごとく甚美なりといへり又
信濃深山にも此ものをとり食ふ房州二山
といふ所にハ正二月比村民いゝ合て雷
《ルビ:猟|がり》とて山中を猟出し取るといへりし
からざれバ其年夏秋雷多しといゝ伝ふ
寺嶋氏の三才図絵に詳にのせたり又
加賀の国石川郡《ルビ:白|白》山権現一名妙理権
現此山中に雷といふ虫あり大サ略蛙の
ことくして春中《ルビ:夥|おゝ》く出る年ハ其年