翻刻
是も又絶する所の陽気氣を引かへさんが
ための術なるべし今喩嘉言が尚論編
を閲(けみ)するに附子一味をもって陰躁を
止めるといへる語ありこれによって考る
に雷にうたれたるものは陽氣滅消して
陰氣のみのやまいといへる故ゆへに元湯をか
へすに附子を用るにやことに彼書に
霹靂散と名付けしも雷霆に昏盲す
る症に用るのこころにや猶尋へし此
外俗方に雷發せんとするまへより氣
重く頭痛し己に雷を聞ぬればいよ〳〵
頭痛する症には升麻蒼木薄苛右三
味常のことく煎じ是を服して□愈
又雷にうたれて氣絶したる者には病人
を阿をぬけ胸腹の上へ活たる鮒をおき
彼鮒動揺すれば忽ち蘓生するまた雷火
のために皮肉を蔽(やぶ)られ腫痛には降真
香を焼此煙にてふすぶるときは多は
汁流つきて忽ちかわきいゆ
惣じて雷を畏るる人俗間にいろ〳〵
現代語訳
これもまた、絶えた陽気を引き戻すための治療法であろう。今、喩嘉言の『尚論篇』を閲覧すると、附子一味をもって陰躁を止めるという記述がある。これによって考えるに、雷に打たれた者は陽気が滅消して陰気のみの病いといえる。それゆえに元気(もとの気)を回復させるのに附子を用いるのであろうか。特に彼の書に「霹靂散」と名付けられたものも、雷霆によって昏倒・失明する症状に用いる意図からであろうか。なお、さらに調べるべきである。この他、民間の処方として、雷が発生しようとする前から気が重く頭痛がし、すでに雷の音を聞けばいよいよ頭痛がひどくなる症状には、升麻・蒼朮・薄荷の三味を通常の通り煎じて服用すれば、治癒する。また、雷に打たれて気絶した者には、病人を仰向けに寝かせ、胸腹の上に生きた鮒をおくと、その鮒が動揺するにつれてたちまち蘇生する。また、雷火によって皮肉を破られて腫れ痛む場合には、降真香を焼き、その煙でいぶすと、多くの場合は汁が流れ出てたちまち乾いて癒える。総じて、雷を恐れる人に対して、民間ではいろいろな……