翻刻
船の帆柱(ほばしら)。或(あるひ)は綱具(つなぐ)など
にかゝりて燈(もゆ)ること折々(をり〳〵)
ありて。殊(こと)に電雨(ゆうだち)の時(とき)な
どは、一艘(いつさう)の舟(ふね)に三十ば
かりも燈(もゆ)ることあり、また
時(とき)としては其火版(そのひいた)のご
とく。三尺(さんしやく)ばかりに広(ひろ)が
ることもあり或(あるひ)は球(たま)とな
りて帆桁(ほけた)あるひは帆柱(ほはしら)
の端(はし)に掛(かゝ)ることあり、また銃搶(じうそう)の切先(きつさき)或(あるひ)は馬(むま)の耳(みゝ)
の先(さき)に火(ひ)の燈(もゆ)ることありといふ、これは空気(くうき)の中(なか)
に越歴(えれきとる)の多(おほ)く積(つも)りたる時(とき)。樹木帆柱銃搶馬(じゆもくほはしらじうさうむま)の耳(みゝ)
などの先(さき)より伝(つたは)りて、除々(しづか)に地(ち)に移(うつ)り去(さ)るとて
此象(このかたち)を顕(あらは)すものなり
紅(くれなひ)の雪緑(ゆきみどり)の雪黒(ゆきくろ)き雪の事
雪(ゆき)は誠(まこと)に白(しろ)きものなるに、時(とき)としては紅(くれなひ)なる雪(ゆき)
のふることありて、其色最(そのいろもつと)も鮮(あざや)かなるものなりと
ぞ、天平(てんびよう)十四年|陸奥(むつ)の国(くに)に、紅(くれなひ)なる雪(ゆき)の降(ふ)りしこと