翻刻
悟(さと)るべし、さてこれより図解(づかい)を
以(もつ)て空中(くうちう)に船(ふね)の影(かげ)の倒(さかさま)に掛(かゝ)り
し所以(ゆゑん)を説くべし、図(づ)のうちに
一 二 三 四 五の印(しるし)あるは空気(くうき)の
層(かさ)なり此時(このとき)空気の温度海水(あたゝまりかいすゐ)の
温度(ぬくみ)より強(つよ)く、海面(かいめん)に近(ちか)き層(かさ)は
空気|濃(こ)く上(うへ)に昇(のぼ)るにしたがひ
て愈(いよ〳〵)うすく
光(ひかり)を折曲(をりまが)ら
しむる勢(いきおひ)も下(した)の層(かさなり)に強(つよ)くして、上(かみ)の層に上(のぼ)るに
したかひて漸(やうや)く弱(よは)し、故(ゆゑ)に《箱:い》船(ふね)の影其初(かげそのはじ)めは順(じゆん)
に空気(くうき)に映(うつ)り《箱:一》《箱:ニ》《箱:三》《箱:四》《箱:五》と層を逐(を)ひて次第(しだい)に
曲(まが)り《箱:ろ》に至(いた)りこれより其影逆(そのかげさかさま)に反(かへ)りて却(かへ)つて
下(した)に向(むか)ひて曲り、五 四 三 二 一と層を逐ひて次第
に多(おほ)く曲りて《箱:は》にいたり此所(このところ)より之(これ)をみれば
正(まさ)に《箱:に》の処(ところ)にありて倒(さかさま)に掛(かゝ)るがごとくに見(み)へ
しなり
蜃気楼並(しんきろうならび)に海市(かいし)の事(こと)