翻刻
たる日の再(ふたゝ)び上(のぼ)るが如(ごと)く見(み)ゆることは間々(まゝ)ある
ことなり、これは空(そら)の氷(こほり)あるひは水気(すゐき)の集(あつま)りたる
所(ところ)に夕日(ゆふひ)の影(かげ)の映(うつろ)ひて仮(かり)の日(ひ)を現(あらは)し真(まこと)の日(ひ)は
雲或(くもあるひ)は山(やま)などに隠(かく)れて見(み)へざれば恰(あたか)も傾(かたぶ)きた
る日の再(ふたゝ)び登(のぼ)るが如(ごと)くに見ゆるなり、即(すなは)ち図(づ)の
ごとし図の中(うち)の《箱:い》は真(まこと)の日にて山(やま)に隔(へだて)られた
るが故(ゆゑ)《箱:は》に於(おひ)ての人(ひと)より見(み)へず然(しか)るに《箱:ろ》の所(ところ)
にて空(そら)の氷或(こほりあるひ)は水気(すゐき)に映(うつ)り其光(そのひかり)の行筋折返(ゆきすぢをれかへ)り
て《箱:は》に至(いた)り人の目(め)に入(い)りてこれを見(み)ること《箱:に》の
所(ところ)にあるが如(ごと)し、また天文(てんぶん)十二年正月八日の夜(よ)
明方(あけがた)まで月(つき)の空(そら)に在(あり)しといふも、前(まへ)の理会(りやい)にて
真(まこと)の月(つき)の入(いり)たる後其影空(のちそのかげそら)の氷(こほり)に映(うつ)ろひて仮(かり)に
月(つき)の形(かたち)を顕(あらは)したるなるべし
灰(はい)の雨(あめ)ならびに砂(すな)の雨(あめ)の事(こと)
昔(むかし)より灰或(はいあるひ)は土(つち)の降(ふ)ること雨(あめ)の如(ごと)くなることあり
て、甚(はなは)だ怪(あや)しきことの様(やう)に言伝(いひつた)ふれども全(まつた)くは火(くは)
山(さん)の吹出(ふきだ)したるもの、風(かぜ)に吹送(ふきをく)られて遠(とほ)く飛行(とひゆ)
き、或(あるひ)は地面(ちめん)の熱気立昇(ねつきたちのぼ)るに随(したが)ひて、空中(くうちう)に上(のぼ)り