翻刻
思(おもひ)の外(ほか)の処(ところ)に落(おち)るが故(ゆゑ)。其地(そのち)の人は火山(くはさん)の吹出(ふきだ)
すを見(み)ざれば、怪(あや)しく只(たゞ)ならぬことの様驚(やうおどろ)くなり、
土地(とち)によりては年毎(としごと)に土(つち)の降(ふ)る所(ところ)あり、亜弗利(あぶり)
加州(かしう)「さはら」の海岸(かいがん)は冬春(ふゆはる)の間砂空(あいだすなそら)より降(ふ)るな
り、船(ふね)もし此辺(このへん)を通行(つうこう)すれば帆桁甲板(ほげたかんぱん)みな砂(すな)を
蒙(かうふ)らざる所(ところ)なしといふ、これは大沙漠(たいさばく)の砂風(すなかぜ)の
為(ため)に吹送(ふきをく)らるゝものなり、亦支那(またしな)の北方(ほくぽう)にも土(つち)
の降(ふ)るところあり、これは蒙古(もうこ)の沙漠(さばく)より吹送(ふきをく)
らるゝものなり
火井(くはせゐ)の事(こと)
越後国柄目木村(ゑちごのくにからめきむら)に或農家(あるのうか)あり、其家(そのいへ)の炉辺(ろへん)に穴(あな)
を穿(うが)ち、これに竹(たけ)の筒(つゝ)を立(たて)てその口(くち)に火(ひ)を付(つく)れ
ば、燃(もゆ)ること三百|目掛(めが)けの蝋燭(ろうそく)を燈(とも)すが如(ごと)き光(ひかり)あ
り、炎(ほのを)の長(なが)さは三寸|許(ばかり)、筒(つゝ)の口(くち)より上(うへ)五|分(ぶ)ほどは
色青(いろあを)く其上(そのうへ)は赤(あか)く黄色(きいろ)にして、常(つね)の火(ひ)と同(おな)じ、ま
た筒(つゝ)を接(つ)ぎてその気(き)を引(ひ)けば、横(よこ)にも縦(たて)にも思(おも)
ふまゝに移(うつ)すべし、同国入方村(どうこくいりかたむら)にもかゝる所(ところ)あ
り、共(とも)に寛文年中(くはんぶんねんぢう)に見出(みいだ)したるものといふ、如何(いか)