翻刻
に含(ふく)める水気(すゐき)の忽(たちま)ちに集(あつま)りて水となりたるも
のなり、其証拠(そのしようこ)には龍巻(たつまき)の水(みづ)は少(すこ)しも塩気(しほけ)を含(ふく)
まずともいひ、また一説(いつせつ)には二(ふた)つの風両方(かぜりやうはう)より
来(きた)り、互(たがい)に摩違(すれちが)ひ或(あるひ)は互(たがい)に行逢(ゆきあ)ふより、此象(このかたち)を顕(あらは)
すこと、恰(あたか)も二(ふた)つの急流落合(きうりうおちあ)ふ所(ところ)には、水(みづ)の渦巻(うづまく)
くと同(おな)じ道理(どうり)なりとも説(と)けり
辻風(つじかぜ)のこと
辻(つじ)かぜは龍巻(たつまき)とおなじものにて、只海上(たゞかいしやう)に顕(あらは)る
るを龍(たつ)まきといひ、陸地(りくち)に起(をこ)るものを辻風(つじかせ)とな
づくるのみ、雲(くも)の廻下(まひさが)る形(かたち)は龍巻(たつまき)と少(すこ)しも異(こと)な
ることなけれども、砂塵(すなちり)の廻上(まひのぼ)るのみ異(こと)なりとす、
辻風は砂塵を巻上(まきあぐ)るのみならず甚(はなはだ)しきは人(ひと)も
家(いへ)も巻上(まきあ)げ、樹木(じゆもく)を折(を)るばかりの力(ちから)あり、実(じつ)に一(ひと)
わたりは奇怪(きくわゐ)のやうなれども、前(まへ)に云(い)へる龍巻
と同(おな)じ道理(どうり)より起(をこ)るものなり
天開眼(てんかいがん)の事(こと)
夜中北(やちうきた)の方(かた)に光(ひかり)ありて、朝日(あさひ)の出(いで)んとするが如(ごと)
く、また遠方(えんはう)に火事(くはじ)のあるが如く見(み)ゆることあり、