翻刻
これを支那(から)にては天開眼(てんかいがん)といひ、西洋(せいよう)にては「お
うろうらぼれへりす」即(すなは)ち北暁(ほくげう)と名(な)づく、此(この)北暁
の顕(あらは)るゝ事冬(ことふゆ)の比最(ころもつと)も多(おほ)し。こゝにては只上(たゞかみ)に
いへるがごとく見(み)ゆるといへども、北方(ほくはう)の国々(くに〴〵)
にては、虹(にじ)の如(ごと)き形(かた)ちを顕(あら)わすを見(み)る、其色(そのいろ)は薄(うす)
き黄色(きいろ)にして、光芒(ひかり)を放(はな)つこと次(つぎ)の図(づ)の如く、皆北(みなきた)
に向(むか)ひて流(なが)れ其本(そのもと)は黄色にて。中程(なかほど)は緑(みどり)に、末(すへ)は
美(うつく)しき紫(むらさき)なりといふ、これも世(よ)の人の甚(はなは)だ怪(あや)し
く思(おも)ふものなれども、空気(くうき)の上層(うはかさ)に越歴(えれきとる)の流(なが)る
るものにて其証拠(そのしやうこ)には、
何時(いつ)北暁(ほくげう)の顕(あらは)るゝとも、
其弓形(そのゆみがた)の頂上(てうじやう)は常(つね)に磁(じ)
石南北(しやくなんぼく)の子午線(しごせん) 磁石(じしやく)の
針(はり)の指(さ)
す方(かた)は、真(しん)の北(きた)にあらず、
ゆゑに真|南北(なんぼく)と、磁石南
北との別(べつ)あり、また子午(しご)
線(せん)とは、南極(なんきよく)より北極(ほくきよく)に
見通(みとほ)したる
線(せん)をいふ に当(あた)り、且(か)つ
磁石(じしやく)の針(はり)に感動(かんどう)を起(おこ)す
といへり、しかるに我萬(わがまん)