翻刻
【右頁】
玉(ぎよく)旙(ばん)竿(かん)孟(もう)康(かう)
義名(ぎめい)を琢(みが)くことは。
玉(たま)の如(ごと)く。武勇(ぶゆう)を
顕(あらは)すことは。旙(はた)
竿(ざほ)に似(に)たり
身(み)は旙(はた)よりも
翻(ひるがへつ)て軽(かろ)く。
心(こゝろ)は竿(さほ)よりも
真直(ますぐ)にして
かたし。動静(どうじやう)よく
此寶玉(このほうぎよく)を。
持獲(たもちえ)たり
【左下欄外】 ウ上◯中ノ十
【左頁 右下欄外】ヲ上◯中ノ十一
立(りつ)地(ち)太(たい)歳(さい)阮(げん)小(せう)二(じ)
主(あるじ)剛(つよ)ければ艸屋(さうおく)【左に(カヤブキ)】
還(かへつ)て鉄城(てつじやう)に
勝(まさ)れり
呉用(ごよう)が
所好(のぞむ)數斤(すきん)の
鯉(こひ)は譚(はなし)のうち
に龍(りゆう)と成(な)らんず
㔟(いきほひ)あり網罟(あみ)を
黄泥岡(くはうでいこう)の嶺(みね)に
攤(さばひ)て東京(とうきん)への贈(おくりもの)
山鯨(やまくじら)てふ大漁(だいりやう)あり
その重(おも)きこと十万貫(じうまんぐわん)
現代語訳
【右頁】
玉旙竿 孟康
義名を磨くことは玉のようであり、武勇を表すことは旗竿に似ている。
身は旗よりも軽やかに翻り、心は竿よりも真っ直ぐで堅い。
動静をよく心得て、この宝玉を手に入れ保持している。
【左下欄外】ウ上◯中ノ十
【左頁 右下欄外】ヲ上◯中ノ十一
立地太歳 阮小二
主人が強ければ、茅葺きの草屋でも鉄の城に勝る。
呉用が望む数斤の鯉は、話の中で龍となる勢いがある。
網を黄泥岗の嶺に広げて、東京への贈り物という大漁を得た。
その重さは十万貫という山鯨(大きな獲物)であった。