翻刻
わしをふるよは【女に振られた夜は】
ひとしほながし
ばければくびか
なをながしみ
こしにうどう
はかげのあまり
けいせいをつけ
てこのあきわ
やのびやうぶの
そとからよその
恋よとうら山し【よその恋よと…は忠臣蔵の台詞】
くくびをみつ
かつたもしらず
いる
【左ページ】
ふさ〳〵しい【大げさだ、ふてぶてしい】
ちくるいのうん
たまごのふわ〳〵だ
【畜類の産んだ孫→たまごのふわふわ(江戸時代の人気料理)…と続ける洒落】
いろおとこだ
らふ今じぶんに
なつてくることはねへ
よによろしいで
けものはあしをあ
らつてねるじぶんだ
【よろしいの反対で悪し(あし)、悪しに足をかけて、足を洗って寝る時分につなげる洒落】
ばからし
いいゝおと
こじやァ
おつせん
せむし
でおら
すはな
現代語訳
私が女に振られた夜は、ひとしお長し。化ければ首がなお長し。見越し入道は影のあまり、傾城を連れてこの秋葉屋の屏風の外から「よその恋よ」と恨み、首を見つかったかも知らない。
【左ページ】
「大げさな畜類の産んだ卵のふわふわだ」
「色男だろうが、今時分になって来ることはない。よろしい。獣は足を洗って寝る時分だ」
「ばからしい。いい男じゃあおっせん。せむしでおられるはな」
英語訳
When I was rejected by a woman, the night felt especially long. If I transform, my neck becomes even longer. The Mikooshi-nyudo, due to his excessive shadow, brought a courtesan and from outside the folding screen of this Akiba-ya shop, lamented "someone else's love," and his neck might have been discovered.
【Left Page】
"What an exaggerated fluffy egg laid by a beast!"
"He may be a ladies' man, but he won't come at this time of night. Good. It's the time when beasts wash their feet before sleeping."
"Ridiculous. He's not a handsome man. He's a hunchback, isn't he?"