翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物楽屋異牒 : 2巻 - 翻刻

化物楽屋異牒 : 2巻 - ページ 16

ページ: 16

翻刻

たぬきはゑて かたのそらね いり【空寝入り、寝たふり】をして つらやまくらが ふたつあると 女郎がくるか と 〳〵かとおもつ ていたりしが よいからは八じやう【八畳=狸のきんたま】 をだしかけて いたりし□□ さけや□ たばこ のふきがらやら とんだなんじう ひどいくめんで こらへていたりける よふ〳〵女郎かき たりしゆへちつと いやみをしよふと おもふてまくらもとで 七だんめのふみより ながい参らせ候【合字】ではかどらず【忠臣蔵の台詞】 あげくのはていろ男がこぬとの かんしやくかんざしぬいてたゝみざんじれつ【斬じ→じれつてい】 ていぞよにたぬき大なんきおもはずしつ ほをだしける 【左ページ】 ばからしい此たゝみは いつそふく〳〵する【にくにくする?】 そしてけかはへ たそふだぶく〳〵ちや がまにけがはへたした【毛が生え出した】 【音の洒落なら31行目は「ふくふくする」でなければ33行目の「ぶくぶく茶釜」に繋がらないが、癇癪を起こして簪を畳みに刺したあとの台詞なので「にくにくする」かもしれない。にくにくと書いてもふくふくと書いても字形的には大差ないのでひょっとすると文字の形も洒落なのかも知れない】

現代語訳

狸は絵のような空寝入り(寝たふり)をして、面や枕が二つあると女郎が来るのかと思っていたが、夜になってから八畳(狸の金玉)を出しかけていた。酒や煙草の吸い殻やらで、とんだ難儀でひどい苦悶で堪えていたが、ようやく女郎が来たので、ちょっと嫌味を言おうと思って、枕元で「七段目の文より長い参らせ候では埒が明かず」(忠臣蔵の台詞)。挙げ句の果てに色男が来ないとの癇癪で、簪を抜いて畳を斬りつけて、じれったがっている様子に、狸は大いに難儀に思わず失歩を出してしまった。 【左ページ】 「ばからしい、この畳はいっそ腹立たしい。そして毛が生え変わったそうだ。ぶくぶく茶釜に毛が生え出した」

英語訳

The tanuki pretended to sleep like in a picture, thinking that with two masks and pillows, a courtesan might come. But when night fell, he had started to expose his "eight-mat room" (tanuki's testicles). With sake and tobacco butts around, he endured terrible hardship and anguish. When the courtesan finally arrived, he thought to say something sarcastic, so from beside the pillow he said, "The long 'I humbly present' from Act Seven's letter gets us nowhere" (a line from Chushingura). In the end, in a fit of anger over the handsome man not coming, she pulled out her hairpin and slashed at the tatami mats in frustration. Seeing this, the tanuki inadvertently let out a fart without meaning to. 【Left Page】 "Ridiculous, this tatami is all the more irritating. And the fur has apparently changed. The bubbling tea kettle has sprouted fur."