翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物楽屋異牒 : 2巻 - 翻刻

化物楽屋異牒 : 2巻 - ページ 4

ページ: 4

翻刻

むかし〳〵とは まん八【?】きよねん しのたぞめの 大たてもの くすのはが 弟きつね こんくはいと いふものあり もゝくり三 ねんかき八 ねんして いきとし いける もの いつれか くがい【苦界】なら ざるはなし きつねもち とせやこん〳〵 といふて□【七?】【千では?】 年を□ち□【まちて】 【左ページへ】 大つう人となる それ大つうは きつねとかはり きつねはたい つうとかはる りくつなり こんくはいもねん あけかまちとふ しくねんかあ いてのたのしみ はやかて ひやつこのなを ついてはかす【化かす】をつね の此まゆけ【眉毛】いとより ほそく ソレよしか あり かてへの【よしかありかっての】 もの いゝならい【物言い、習い】 きものも とふさん【唐桟、縞の種類】が よかろふか くろ はち【黒八、黒八丈のこと】 かよかろふ かとふ かこふかき ちかいのやう になつて   いる 【狐の名前は「こんくハい」とも「こんくワい」とも読め、どちらにするか悩んだのですがここでは「こんくはい」で統一しました。どちらの場合でも発音は「こんかい」です。漢字で「吼噦」と書いて狐の鳴き声を意味するそうです。ここではコン吉とかコン太郎くらいの意味だと思われます。】

現代語訳

昔々のこと、 万八というか去年のことか、 篠田染めの 大建物に 楠の葉が 弟子の狐、 コンクハイという 者がいた。 桃栗三年 柿八年という言葉があるが、 して 生きとし 生ける もの、 いずれが 苦界でない ものがあろうか。 狐も千歳 やコンコンと 言って千年を 待って 【左ページへ続く】 大通人となる。 それゆえ大通は 狐と変わり、 狐は大通 と変わる 理屈である。 コンクハイも年が 明けるのを待つという 四十九年が 過ぎての楽しみよ。 はやくも 奴の名を つけては化かすのを常 とする。この眉毛は糸より も細く、それゆえ 趣がある。昔からの 物言いや習い、 着物も唐桟が よかろうか、黒八丈が よかろうかと 考えを巡らせ 近いもののよう になって いる。

英語訳

Once upon a time, whether it was Man'hachi or last year, in the great building of Shinoda dyeing, where camphor leaves grew, there was a disciple fox called Konkuhai. There is a saying "peaches and chestnuts in three years, persimmons in eight years," and indeed, among all living beings, which one is not in the world of suffering? The fox too, saying "chitose" and "kon-kon," waits for a thousand years [continues to left page] to become a sophisticated urbanite (ōtsū). Therefore, the sophisticated person becomes like a fox, and the fox becomes like a sophisticated person— such is the logic. Konkuhai too, waiting for the new year to come, after forty-nine years have passed, what joy! Quickly taking on a servant's name, he makes it his habit to deceive others. His eyebrows are finer than thread, and therefore have elegance. Following the old ways of speech and custom, wondering whether tōzan fabric would be good for clothing, or whether black hachijō silk would be good, he deliberates and becomes like something close to that.