翻刻
毛氈ノ樣ナル類ナリ裾短ク袖長シ左リマヘニ
合セ其體相甚タ賤ク聲ハ鳩ノ鳴ク如ク言舌分
ラス蝙蝠ノ羽ヲ廣ケタル如ク最モ見苦ルシ名
香ヲ懐中シテ御殿ニ薰シ渡ルウルカン信長ニ
對シテ禮スル法兩臑指先ヲ揃ヘ向フヘ差出シ
兩手ヲ組テ胸ニ當テ頭ヲ仰ク誠ニ不思議ノ禮
式ナリ獻スル所ノ物七種七十五里ヲ一目ニ見
ル逺眼鑑芥子ヲ卵ノ如クニ見ル近目鏡猛虎皮
五十枚毛氊五町四方見當ナキ鐵炮伽羅百斤八
疊釣リノ蚊帳一寸八分ノ香筥ニ入ルコンタツ
現代語訳
毛氈のような類のものである。裾は短く袖は長い。左前に合わせており、その体裁は甚だ卑しく、声は鳩の鳴くようで言葉が分からない。蝙蝠の羽を広げたようで最も見苦しい。名香を懐中して御殿に薫らせて回る。ウルカンが信長に対して礼をする作法は、両膝と指先を揃えて向こうへ差し出し、両手を組んで胸に当て頭を仰ぐという、誠に不思議な礼式である。献上する物は七種類で、七十五里を一目で見る遠眼鏡、芥子を卵のように見る近目鏡、猛虎の皮五十枚、毛氈五町四方、見当もつかない鉄砲、伽羅百斤、八畳吊りの蚊帳、一寸八分の香筥に入るコンタツ