翻刻
射山(いやま)と書(かき)かへたるよし又(また)湯山(ゆやま)と
云(いひ)しは清(すが)の湯山主(ゆやまぬし)と称(しやう)し奉(たてまつ)る
のゆへなり往昔(むかし)は此御社(このみやしろ)ゐやまの
半腹(はんふく)にあり今其(その)旧跡(きうせき)に松(まつ)の古木(こぼく)
有(あり)て折(おり)〱龍燈(りうとう)を捧(ささ)く又(また)麓(ふもと)より
南(みなみ)一町(いつちやう)あまり隔(へだつ)て一(いち)の鳥居(とりい)の有(あり)
し地(ち)今(いま)の御社(みやしろ)よりも南(みなみ)にあたり
田圃(でんほ)の中(なか)に礎(いしずへ)など残(のこ)りて其(その)所(ところ)の
字(あさな)を鳥居谷(とりいだに)といふ天文(てんぶん)の比(ころ)より
おちつかた梁棟(りやうとう)の文(ふん)など今(いま)尚(なを)あり
貝石山(かいせきざん)
名(な)は射山(いやま)なれど貝(かい)のすがたせる石(いし)の
多(おゝ)くあるをもて貝石山(かいせきざん)といふ
風流(ふうりう)の人(ひと)の尤(もつとも)愛(あい)すべき奇物(きぶつ)なり