翻刻
郷ゑもん【?】 こう
しう をも【甲州をも立ち退き】
たち
のきこゝか
しこをあ
るきもゝ
いさかの
へんにて
日
くれ
【屋根の下へ続く】
けれはやとを
かりける【本文は23行目に続く】
【女房の台詞】
あるし【主】のるすにわた
くしかとめますることは
ゆきのたんの上
るり【浄瑠璃】おつとはたこくの
るすいつまてもゆる〳〵と
とまりなされませ
【女の尻尾のあたり】
ある
し
の 女ほう【(宿の)主の女房】
三十は
か
り
な
る
が【三十ばかりなるが】
【その下へ】
よろこひ
郷ゑも
んを とめる
【郷ゑもん=郷介の台詞】
これはよいところへ
まいつたわれ□
いそくたひてはなし【急ぐ旅ではなし】
そんならをせわに【そんならをせわニ】
なりませふか
【左ページ右端中ほど】
郷すけやとを【郷介、宿をかり】
かりあるし
の女ほう
【左上へつづく、かすれが多し。】
にくと
かれ【主の女房に、くどかれ】
よふ
く
る
まて はな
し【夜更くるまで話し】
けるかふと
女
ほうの
かほをみれは
てにかけ
し
へく内
か
その
まゝ
也
おまんか
くひ【おまんが首】
郷介をみて
から〳〵と
わらふ
ころ
されし
こせかゆうれい【瞽女が幽霊】
うらみをいふ
【郷介の袖の下、かすれている】
■■ど■■し
■■た■■
【郷介の左下】
ま■
の■■
■■
なん■■ゆへ
□…
む□
■
■
現代語訳
郷右衛門(正しくは郷介)は甲州をも立ち退き、あちこちを歩き回り、もくい坂の辺りで日が暮れたので、宿を借りた。
【女房の台詞】
「主人の留守に私が泊めさせることは、雪の段の浄瑠璃のように『夫は他国の留守』、いつまでもゆっくりとお泊まりなさいませ」
(宿の)主の女房で三十ばかりの者が、喜んで郷右衛門を泊める。
【郷右衛門(郷介)の台詞】
「これは良いところへ参った。我らは急ぐ旅ではない。それなら世話になりましょうか」
郷介は宿を借り、主の女房に口説かれ、夜更けるまで話していたが、ふと女房の顔を見れば、手にかけた(殺した)下男可内がそのままの姿であった。
おまんの首が郷介を見てからからと笑う。
殺された瞽女の幽霊が恨みを言う。
[郷介の台詞の一部、文字がかすれて判読困難]