翻刻
○小普請支配高千九百石小川町一ツ橋通り大久保筑前守殿
今日縁談の義ニ付早川清吾殿入来示談済て次の間へ送り
出る時節悴主馬殿栄之丞殿は共に送出引入んとする折から
一時に住居潰れ父子三人即死家来男女九人即死又右早川氏は
一町余行て小川町所々の出火ニ帰路をふさがれ御堀端より
牛込江帰られしとなり
○中奥御小性高三百俵右同所大久保淡路守は家来嶋田喜内
与いふ者孝行なる者ニ付金三両を与え養父方へ暇を遣はし
病気を防し其身座敷へ入時地震ニ而屋敷不残潰れ当主即
死家士男女十一人即死其時右喜内は途中ゟ馳帰り主人の安否を
伺わんとするに右騒乱の中ゆへ漸主人の居所を掘出しける
がはや死して在しされども近火なれば主人の死骸をかゝへ
市ヶ谷迄逃退又取て返し再ひ屋敷へ来り所々火を消たりと
なり誠に忠孝兼備たる人と云べき也
○御側役高四千五百三十石小川町一ツ橋通り石川美濃守殿家士ニ
鈴木新兵衛同悴新六両人地震を恐れず主人の居間へ駈付ル
迚玄関にて押潰され即死其外家中三人外ニ男女五人死ス同所
小山氏ゟ出火にて屋敷不残類焼然るに当家焼跡ゟ金銀の
具多灰の下より掻出したるを見て悪党共仮屋へ火を懸是ヲ
盗まんとセし由然るに用人塚田石田等堅く守りて一物をも