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絵本黴瘡軍談 3巻 - 翻刻

絵本黴瘡軍談 3巻 - ページ 36

ページ: 36

翻刻

臨(りん)何(なん)の喜(よろこ)【㐂】びか是(これ)にしかん去(さり)ながらこゝに一つの難儀(なんぎ)あり我(わ)が曹(ともがら) 先生(せんせい)を以(もつ)て大元帥(たいげんすい)と仰(あおが)んと欲(ほつ)すれども先(さき)に元帥(げんすい)となしたる医(い) 国主(こくしゆ)数員(すいん)先生(せんせい)を拒(こば)んで彼(かれ)は富貴国(ふうきこく)の軍(いくさ)になれず黴賊(ばいぞく)駆(く) 除(ぢよ)の元帥(げんすい)の器(き)には非(あら)ずと罵(のゝし)る事(こと) 【㕝】大(おゝ)かたならず希(こひねがはく)は先生(せんせい)彼等(かれら)と 一問答(ひともんどう)して我々(われ〳〵)が疑(うたが)ひをも晴(はら)さし給へと云(い)はれて淳直(じゆんちよく)些(ちつ)とも擬宜(ぎぎ) せず某(それがし)已(すで)に招(まね)きに応(おう)【應】ず何(なん)ぞ貴命(きめい)にそむかんや諸元帥(しよげんすい)と応(おう)【應】 対(たい)の事は本(もと)より願(ねが)ふ所(ところ)なりと答(こたふ)れば国主(こくしゆ)やがて命(めい)を伝(つた)【傳】へ大(たい) 元帥(げんすい)副元帥(ふげんすい)其外(そのほか)軍将(ぐんしやう)を招(まね)き集(あつ)む其(その)面々(めん〳〵)は山井(やまゐ)養民(ようみん)部(べ) 良(ら)棒庵(ぼうあん)藪井(やぶゐ)竹庵(ちくあん)寺領(ぢれう)養仙(ようせん)我久井(がくゐ)須加丹(すかたん)滑田(ぬめた)順才(じゆんさい)不(ふ) 実(じつ)貪欲(とんよく)口利(くちり)功庵(こうあん)不学(ふがく)弁功(べんこう)等(とう)の医術国(いじゆつこく)の主人公(しゆじんこう)何(いづれ)も当国(とうごく) 主(しゆ)の愛信(あいしん)する所(ところ)なり階下(かいか)には部下(ぶか)の軍将(ぐんしやう)山帰来剤(さんきらいざい)【皈】五宝丹(ごほうたん) 紫金丹(しきんたん)雞汁煎(けいじゆせん)等(とう)を始(はじ)めとして捜風解毒湯(さうふうげどくとう)消疳敗毒(せうかんはいどく) 散(さん)竜胆瀉肝湯(りうたんしやかんとう)【膽泻】防風通聖散(ぼうふうつうせうさん)荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)【草かんむりに「防」】六物解(りくもつげ) 毒湯(どくとう)通天再造散(つうてんさいざうさん)芎黄散(きうわうさん)伯州散(はくしうさん)反鼻丸(はんひぐはん)無二膏(むにかう)無(む) 三膏(さんかう)万能膏(まんのふかう)【萬】赤万能膏(あかまんのふかう)黒膏薬(くろかうやく)速功紙(そくこうし)油膏薬(あぶらがうやく)付(つけ) 薬(ぐすり)洗薬(あらひぐすり)蒸薬(むしぐすり)其外(そのほか)薬将(やくしやう)三百/余員(よいん)整々(せい〳〵)として排列(はいれつ)す 尓時(そのとき)倶生神(くしやうじん)は座中(ざちう)をみかへり各(おの〳〵)知(し)り給ふごとく黴軍(はいぐん)強(つよ) くして国家(こくか)危(あやう)く主公(しゆこう)の憂苦(ゆうく)殊(こと)に甚(はなはだ)し各(おの〳〵)の軍配(ぐんばい)おろかなる にはあらねども未(いまだ)平治(へいぢ)の萌(きざ)しを見(み)ずよりて我(わ)れ主公(しゆこう)をすゝめて淳(じゆん) 直(ちよく)君(くん)を伴(ともな)ひ来(きた)り元帥(げんすい)の任(にん)を与(あた)へ延寿丸(ゑんじゆぐはん)等(とう)の四天王(してんわう)を大将(たいしやう)として 城(しろ)を出(いで)て戦(たゝか)はしめんと欲(ほつ)す是迄(これまで)の如(ごと)く六物解毒湯(りくもつげどくとう)捜風解(さうふうげ) 毒湯(どくとう)忍冬(にんどう)蕺薬(じうやく)或(あるひ)は五宝丹(ごほうたん)紫金丹(しきんたん)洗薬(あらひぐすり)蒸薬(むしぐすり)膏薬(かうやく) 【二ノ四】

現代語訳

臨まれたことは何という喜びでありましょうか。これに勝るものはありません。しかしながらここに一つの難儀があります。我々は先生を大元帥と仰ぎたく思いますが、先に元帥となった医国主数名が先生を拒んで、『彼は富貴国の戦いに慣れておらず、黴賊駆除の元帥の器ではない』と罵ることが甚だしいのです。願わくは先生が彼等と一問答して、我々の疑いも晴らしてください」と言われて、淳直は少しも躊躇せず、「それがしはすでに招きに応じました。どうして貴命に背きましょうか。諸元帥との応対の事は元より願う所です」と答えた。 国主はすぐに命を伝え、大元帥・副元帥その外の軍将を招き集めた。その面々は山井養民部、良棒庵、藪井竹庵、寺領養仙、我久井須加丹、滑田順才、不実貪欲、口利功庵、不学弁功等の医術国の主人公で、いずれも当国主の愛信する所である。 階下には部下の軍将として、山帰来剤、五宝丹、紫金丹、鶏汁煎等をはじめとして、捜風解毒湯、消疳敗毒散、竜胆瀉肝湯、防風通聖散、荆防敗毒散、六物解毒湯、通天再造散、芎黄散、伯州散、反鼻丸、無二膏、無三膏、万能膏、赤万能膏、黒膏薬、速功紙、油膏薬、付け薬、洗い薬、蒸し薬、その外薬将三百余名が整然として列を成している。 その時倶生神は座中を見回り、「各々ご存知の通り黴軍が強くて国家が危うく、主公の憂苦がことに甚だしい。各々の軍配が愚かなのではないが、未だ平治の兆しを見ない。よって我は主公を勧めて淳直君を伴い来たり、元帥の任を与え、延寿丸等の四天王を大将として城を出て戦わせようと思う。これまでのように六物解毒湯、捜風解毒湯、忍冬、蕺薬、或いは五宝丹、紫金丹、洗い薬、蒸し薬、膏薬

英語訳

"What joy could compare to your arrival! Nothing could surpass this. However, there is one difficulty here. We wish to revere you, sir, as Grand Marshal, but several medical country lords who were previously made marshals reject you, severely berating that 'he is not accustomed to the wars of wealthy nations and is not fit to be a marshal for expelling mold bandits.' We humbly request that you engage in debate with them to clear our doubts as well." When told this, Junju showed not the slightest hesitation and replied, "I have already responded to your invitation. How could I go against your noble command? Discourse with the various marshals is something I have wished for from the beginning." The country lord immediately transmitted the command and summoned the Grand Marshal, Vice Marshal, and other military generals. These individuals were the rulers of medical arts countries: Yamai Yōminbu, Ryōbōan, Yabui Chikuan, Jiryō Yōsen, Gakui Sukatan, Numeta Junsai, Fujitsu Ton'yoku, Kuchiri Kōan, Fugaku Benkō, and others - all of whom were beloved and trusted by the current country lord. On the lower level, the subordinate military generals were arranged in orderly formation: over three hundred medicine generals including Sankirai-zai, Gohōtan, Shikintan, Keijūsen, and others, along with Sōfū-gedokutō, Shōkan-haidokusan, Ryūtan-shakatō, Bōfū-tsūseisan, Keibō-haidokusan, Rikumotsu-gedokutō, Tsūten-saizōsan, Kyūōsan, Hakushūsan, Hanhi-gan, Munikō, Musankō, Man'nōkō, Aka-man'nōkō, Kurokōyaku, Sokukoushi, Aburakōyaku, application medicines, washing medicines, steaming medicines, and other medicinal preparations. At that time, the Birth-Accompanying God looked around the assembly and said: "As you all know, the Mold Army is strong and the nation is in danger, and our lord's suffering is particularly severe. It is not that each of your military strategies is foolish, but we have yet to see signs of pacification. Therefore, I have advised our lord to bring Lord Junju and give him the position of marshal, with the Four Heavenly Kings including Enjūgan as generals, to leave the castle and do battle. As has been done until now, with Rikumotsu-gedokutō, Sōfū-gedokutō, Nindō, Jūyaku, or Gohōtan, Shikintan, washing medicines, steaming medicines, ointments..."