翻刻
つね世【登場人物:佐野源左衛門常世】
幸四郎【役者:松本?】
くせものゝ あとを
つけきたり かたなの
のりを ぬぐい
さゝゑる
源藤太 友右衛門【登場人物/役者:大谷?】
あくじをたくみ
くらまきれに【暗紛れに】
しんのうを
ぬすみ
いだし
人しらず
てにかけ
たちのかん
とするを
さゝへ
られ
きり
はらふ
むね
たか
しん王【登場人物:崇高親王】
松代【役者名】
常世 幸四郎【前半登場人物名 後半役者名】
りやう人を
とゞめ 大介
に主人のいへの
たつべきふん
じつ【紛失】せしふじ
まきのかま【藤巻の鎌】の
ありかを
たづね出
すべしと
いひわかるゝ
かつ山里好【登場人物:勝山/役者:中村?】さいぜんゆび
をきりしそのちしほおもわじ【その血潮思わじ】
なきなたにかゝりしがちしほの
しみしをみてもしやたつ
ぬるかたきかとあやしむ
大介三津五郎【登場人物:弓削の大介/役者:坂東三津五郎】かつ山は主人
のむすめなることをしりつね
よかたへ来りしようすをきゝ
【左ページ下へ続く】
ものかけへ
しのびし
がかつ山が
ゆひを
きりしを
おどろき
な
ぎ
な
たの
ち
しほ【この先かすれ多し】
を
ふけ【拭け】
共
お
ち
ず
□□しを【しみしを?】
みて扨
は此なき
なたにて
主人を
うちしことの
ちしほとゞ
まりおやこ
ゆへちしほ
一つになり
し
は
【血潮がしみる事で親兄弟を判別する話はこの時代の物語によく出てくる話だそうで、有名どころでは『南総里見八犬伝』で父親の髑髏に息子の血を受けて髑髏が血を吸い取ることで真の親子と判別する話がある(ただし八犬伝は本書より後年の作品)】
【本書よりも前では天和二年の『新語園』に同様の話があるとのこと。】
【『新語園』などでは親の骨が子の血を吸うという話になっているが、骨は生きている時は本人の血が通っていたものだから、血に血をそそいでひとつになるのは親子という理屈。】
【挿し絵】
つねよけい母つきはし【登場人物:常世継母・継橋】
広右衛門【役者:大谷?】
□□□□
かたきは
つきは しなりと
つめかくる
【勝山はいぐのぜんじの娘で親の仇を探している。大介は主君の仇を探している(ともに4コマに記述あり)。勝山の血がなぎなたに染みて拭いてもとれないということは、そのなぎなたは勝山の親の血を吸っているということになる。大介はつきはしが主君の仇(勝山の仇でもある)であることに気づく。】
現代語訳
常世(登場人物:佐野源左衛門常世)
松本幸四郎(役者)
悪者の後を
つけて来て、刀の
血糊を拭い
支える
源藤太 市川友右衛門(登場人物/役者)
悪事を企み
暗闇に紛れて
親王を
盗み
出し
人知れず
手にかけて
立ち去ろうと
するのを
阻止され
切り払う
宗高親王(登場人物)
松代(役者)
常世 松本幸四郎(登場人物名 役者名)
両人を
止めて、大介に
主人の家の
建つべき紛失した
藤巻の鎌の
ありかを
探し出すべしと
言い分かれる
勝山 中村里好(登場人物/役者)先ほど指を
切ったその血潮を思わず
薙刀にかかったが、血潮が
染みているのを見て、もしや立ち
退る敵かと怪しむ
弓削の大介 坂東三津五郎(登場人物/役者)勝山は主人の
娘であることを知り、常世の
元へ来た様子を聞き
物陰へ
忍んでいたが
勝山が
髪を
切ったのに
驚き
薙刀の
血潮を
拭けども
落ちず
染みているのを
見て、さては
この薙刀にて
主人を
討ったことの
血潮が留まり
親子ゆえ血潮が
一つになった
のか
常世継母 継橋(登場人物)
大谷広右衛門(役者)
敵は
継橋なりと
詰め寄る
英語訳
Tsuneyo (Character: Sano Genzaemon Tsuneyo)
Matsumoto Kōshirō (Actor)
Following the trail
of the villain, he wipes
the blood from his sword
and supports [someone]
Gentōta Ichikawa Tomouemon (Character/Actor)
Plotting evil deeds,
under cover of darkness
he steals away
the Prince
and attempts to
secretly
kill him
and escape,
but is stopped
and fights back
Prince Munetaka (Character)
Matsudai (Actor)
Tsuneyo Matsumoto Kōshirō (Character name Actor name)
He stops
both men and tells Daisuke
to search for the location
of the lost Fujimaki
sickle that should
establish his master's
house
Katsuyama Nakamura Satoyoshi (Character/Actor) Earlier she cut
her finger, and the blood
inadvertently got on the naginata.
Seeing that the blood has
stained it, she wonders suspiciously
if this might be the retreating enemy
Yuge no Daisuke Bandō Mitsuzaburō (Character/Actor) Knowing that Katsuyama is his
master's daughter, he listens to her account
of coming to Tsuneyo's place
Hidden behind
objects, he was
watching when Katsuyama
cut her hair,
and was surprised.
Though he tries to wipe
the blood from
the naginata,
it won't come off
and remains stained.
Seeing this, he realizes
that with this naginata
his master was
killed, and the
blood remains because
being parent and child,
their blood has
become one
Tsuneyo's stepmother Tsukihashi (Character)
Ōtani Hiroemon (Actor)
The enemy
is Tsukihashi,
he confronts her