翻刻
るなり、|海面(かいめん)に在つては、寒暑針(かんしよしん)二百十二度(ど)の|温(おん)
|度(ど)を|以(もつ)て|沸騰(ふつとう)す、|海面(かいめん)より|若干(そくばく)の|高(たか)さに在ては、
其|度(ど)|低(ひき)くして|沸騰(ふつとう)す、シントベルナルド【シントベルナルドの左に傍線】のホス
パイス【ホスパイスの左に傍線】は、アルプ|山(さん)【アルプ山の左に傍線】|最高(さいこう)の|處(ところ)にして、|海面(かいめん)より|大(だい)
|約(やく)八十尺の|上(うみ)にあり、こゝに於て|水(みづ)を|煮(に)るに、二
百〇三度の|温度(おんど)を|以(もつ)て|沸騰(ふつとう)すといふ、
|空気(くうき)の|温度(おんど)、
|空気(くうき)|愈(いよ〳〵)|高(たか)ければ、其|温度(おんど)|愈(いよ〳〵)|減(げん)ず、|故(ゆゑ)に|物(もの)|空中(くうちう)に|高(たか)
く|抽(ぬきん)づれば、其|物体(ぶつたい)の|温度(おんど)|多少(たしやう)を|減(げん)ず、こゝを以
て|高山(こうさん)の|巓(いたゝき)|必(かなら)す、|永年(えいへん)|氷雪(ひやうせつ)の|消(せう)せざるあり、〇ま
た|高山(こうざん)の|頂(いたゞき)に於ては、|空気(くうき)|甚(はなは)だ|稀薄(きはく)なり、|故(ゆゑ)に|聲(せい)
|音(いん)|聞(きこへ)|難(がた)く、|呼吸(こきう)|逼迫(ひつばく)し、|身体(しんたい)|煩悩(ぼんおう)を|覚(おぼ)ふ、ホムボル
ト、【ホムボルト、の右に傍線】といふ人、チムボラゾ|山(さん)【チムボラゾ山の左に傍線】に|登(のぼ)りし時、|殆(ほとん)ど其
|頂(いたゞ)に|至(いた)らんとせしに、其|眼瞼(まぶた)|鼻孔(はなのあな)|唇(くちびろ)より|血液(けつへき)|滴(てん)
|出(しゆつ)したりと云ふ、|寒暑針(かんしよしん)の|度(ど)は三百尺|登(のぼ)る|毎(ごと)に、
|必(かなら)ず|一度(いちど)を|減(げん)ずるを|例(れい)とす、
|空気(くうき)の|功用(こうよう)
|空気(くうき)は|世(よ)に|功用(こうよう)を|為(な)すものにて其|酸素(さんそ)を|以(もつ)
天然地理学 巻之二 二十九