翻刻
ソン【ソンの右に傍線】と号(ごう)する風(かぜ)あり、その吹(ふ)くや必(かなら)ず期限(きげん)あり、
其|方向(はうこう)は日(ひ)の纏度(めぐり)に従(したが)ふ、若(もし)|北半球(ほくはんきう)に在る時(とき)
は、モンソン【モンソンの右に傍線】西南(せいなん)よりインデヤ洋(やう)【インデヤ洋の左に傍線】上(しやう)を渡(わた)る、また
日(ひ)|南半球(なんはんきう)にあれば、モンソン【モンソンの右に傍線】東北(たうほく)より起(おこ)る、赤道(せきどう)
南(みなみ)三|度(ど)より、冬至線(とうじせん)までアフリカ【アフリカの左に傍線】の東岸(とうがん)より、大(たい)
約(やく)|東経(とうけい)百四十五|度(ど)の間(あいだ)は、第四月より第九月ま
で、常(つね)に西南(せいなん)のモンソン【モンソンの右に傍線】吹(ふ)き、第九月より第四月
迄(まで)、東北(とうほく)のモンソン【モンソンの右に傍線】あり、西南(せいなん)のモンソン【モンソンの右に傍線】は洋上(やうしやう)
を渡(わた)るが故(ゆゑ)に、湿気(しつき)を送(おく)り、雨(あめ)を降(くだ)す事(こと)|多(おほ)くして、
インデア【インデアの左に傍線】の植物(しよくぶつ)をして、至美至盛(しびしせい)ならしむ、東北(とうほく)
のモンソンは、陸(りく)より来(きた)るが故(ゆゑ)に、常(つね)に乾燥(かんそう)せり、
モンソンの原由(けんゆ)
モンソン【モンソンの右に傍線】は恒信風(こうしんふう)より変(へん)ぜるものにして、北方(ほつはう)
にてはアシア【アシアの左に傍線】大洲(だいしう)の攔阻(らんそ)する、東(ひがし)にてはインデ
ア洋(やう)と大東洋(だいとうやう)【インデア洋と大東洋の左に傍線】の中間(ちうかん)なる諸島(しよとう)の相距(あひさ)る事の斉(ひと)
しからざる、西(にし)にてはアフリカ洲(しう)【アフリカ州の左に傍線】の空気(くうき)|常(つね)に稀(き)
薄(はく)なる、且(か)つ四季(しき)に随(したが)ひて日(ひ)の纏度(めぐり)の変換(へんくわん)する、
みな此風(このかぜ)を生(せい)ずる原由(げんゆ)に係(かゝ)る、
天然地理学 巻之二 三十六