翻刻
|水素(すいそ)を|含(ふく)む、|故(ゆゑ)に|硫泉(りうせん)と|称(しやう)す
|湖(みづうみ)
|湖(みづうみ)は其|形(かたち)の大|小(しやう)、其|味(あち)の|鹹淡(かんたん)に|関(くわん)せす其|全(せん)|四囲(しゐ)
|若(もし)くは|殆(ほとん)ど|全周(せんしう)に|陸地(りくち)あるものを云ふ〇たゞ
|人目(じんもく)の見る|所(ところ)によれば、|甚(はなは)だ|較著(かくちよ)ならずといへど
も、|湖(みづうみ)と|河(かわ)と|相(あひ)|関渉(くわんせよ)する事の|驚(おどろ)くべきものあり
川の|流入(りうにう)して|湖水(こすい)を|湛(たゝ)へしむるは|論(ろん)を|俟(また)ず、|湖(こ)
|水(すい)また|川(かわ)を|流注(りうちやう)せしむるものに|属(ぞく)す、その|理(り)い
かんと云ふに|日熱(にちねつ)の|蒸(む)すによつて、|湖水(こすい)|常(つね)に|蒸(しやう)
|気(き)と|化(くわ)して|上昇(じやう〳〵)し、|再(ふたゝ)び|雨(あめ)となつて|地(ち)に|下(くだ)り、|諸(しよ)
|泉(せん)|諸流(しよりう)の|源(みなもと)をなし、|漸〻(やうやく)|相(あひ)|合流(がうりう)して|川(かわ)となるも
のなればなり、この|河水(かすい)また|湖水(こすい)に|注入(ちやうにう)して其
|蒸騰(しやうとう)の|闕乏(けつぼう)を|補(おきな)ふ、これを|以(もつ)て之を|見(み)れば|造化(さうくわ)
|妙機(めうき)の|至美至精(しびしせい)にして其|功用(こうよう)の|最大(さいだい)なる|実(じつ)に
|驚(おとろ)くに|余(あまり)りあり、|若(もし)|此(この)|功用(こうよう)によらざれば、|陸地(りくち)は
|常(つね)に|荒蕪(くわうぶ)して、|滋潤(ぢゝゆん)を|失(うしな)ひ|海水(かいすい)|瀰漫(びまん)して|地(ち)を|没(ぼつ)
|入(にう)するに|至(いた)らん〇|湖(みつうみ)は其|天造(てんざう)の|姿勢(しせい)に|随(したが)ひて
四|類(るい)に|分(わか)つ、第一は|川(かわ)の|流入(りうにう)するなくまた|川(かわ)の
天然地理学 巻之二 六