翻刻
ふたりの衆のをもわくもきのどくの山芝居
どいつもこいつもねているさかいでゑんりよなく
談(だん)じませふかい
銀杏(いてう)
うわさをいへばかげさすとてさつそくの御入(ごじゆ)
来(らい)重畳(ちゃう〴〵)千万こよいさらいの新狂言まだ
惣座中の草木たちも白川よふねの
折もよしかの内〳〵のしゆだんをかため外へ
もらさぬかなへのだんかう岩のものいふ世の
中じやおもい〳〵のりやうけんを三木(さんぼく)即座(そくぎ)【「そくざ」の誤りか】
の懸合(かけあい)に釘(くぎ)をかたむる箱根の山
手のごいの精(せい)○大音声(たいおんじやう)上(あげ)上方詞にてきやうとくすべし
《割書:イカニモ|》めい〳〵しん腹(ふく)をあかしあかねのさす迄も
桑(くわ)の精(せい)
現代語訳
二人の衆のお思わくも気の毒な山芝居、どいつもこいつも寝ているので遠慮なく談じましょうかい。
銀杏(の精)
噂をすれば影が差すとて、早速のご入来、重畳千万。今宜さらいの新狂言、まだ総座中の草木たちも白川夜船の
折もよし、かの内々の手段を固め外へもらさぬ金の団合、岩の物言う世の中じゃ、思い思いの了見を三木即座の掛け合いに釘を傾ける箱根の山。
手拭いの精 ○大音声上げ、上方詞にて強得すべし
《割書:いかにも》銘々真腹を明かし、茜の差すまでも
桑の精