翻刻
狼狽(うろた)へて夫婦子孫も散〳〵に成或は烟りに巻れ老少は人馬にふまれ死するなり世中に火災程おそろしき物なし水死は衣類面体に見覚あれとも焦(こけ)死するものは真黒に成て兄弟のわかちもなし火を剋(こく)する物水なれども雨天にてもただちに消ず大火と成ては水も人力も及ばぬ也一火の粉を防ぐには古き棕櫚(しゆろ)箒に水を付て消すへしと老人の教なり
一方位の吉凶を弁(わきま)へて迯る者は二度焼ヶ三度やけには逢はざるべし 鎮火(ひぶせ)の歌 日蓮大菩薩霜柱氷のはりに雪のけた水のたる木に火こそ消けれ これを写して棟木にはり置べしぬるぞ根太たのむぞたる木やなか升何ごとあらはおこせむねの木 右の二首毎夜|唱(とな)へて外すべしよく聞けよ蛍極なる煙草の火心ゆるせは早鐘の夢