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【右丁】
けるはゆふさりゆきてかへりなはおやのおほせらる
るともゆくましきなりゆふさりはかりおもひねん
してまち給へきひしくちゝのおほせられはやまの
おくにもとちこもりいほりむすびてうき世の中
はすこすともその御かたをははるるまししゝうを
といもゆふさりはかりそあすよりはへちの事あ
るまし心やすくおもひ給へとそおほせられけ
りさるほとにちゝはゝの給ふやう中将のありさ
まをみるにゆふさりよりほかはよもゆかしなか
〳〵かよひそめすはよかりなん大将のためもは
ちかましく侍つるへしいさやだしぬき大将のか
【左丁】
たにおかんとおほせありてともの人にもの給ふ
やう中将をはおくりつけてこしくるまとものも
のともはみなかへれこのふみうちへ参らせよとてい
たされたりそのふみにはけふよりして中将をは
それに御とゝめ候てとしをもそなたにてこさせ
られ候へとそかゝれたる中将それをはゆめにもし
らすおはしけり大将のもとにはきたのかたひめ
きみめのとよりあひておほせありけるは中将殿
のありさまをみるにこよひよりほかよもおはせし
はちかましくおほしけれはいかゝせんとありし
かは御めのと申けるはむかしもある事なれはこ
現代語訳
【右丁】
「夕方に行って帰らないなら、親が仰せになっても行くまい。夕方ほどに思い定めてお待ちください。厳しく父が仰せになれば、山の奥にでも身を隠し、庵を結んで憂き世の中を過ごそうとも、あなたのことを忘れることはありません」と言う。「夕方ほどに。明日からは他のことはありません。安心してお思いください」と仰せになった。そうこうするうちに、父と母が仰るには「中将の様子を見るに、夕方以外はよもや行きたがらない。なまじっか通い始めるよりはよかろう。大将のためにも恥ずかしいことでございました。さあ、だし抜いて大将の
【左丁】
方にお預けしよう」と仰せになって、供の人にお命じになるには「中将を送り届けて来い。車も供の者たちも皆帰れ。この文を内へ参らせよ」として遣わされた。その文には「今日より中将をそちらにお預け申し候て、年もそちらで過ごさせられ候え」と書かれている。中将はそれを夢にも知らずにいらっしゃった。大将のもとには、北の方、姫君、乳母が寄り合って仰せになるには「中将殿の様子を見るに、今夜以外はよもやいらっしゃるまい」と恥ずかしくお思いになったので「いかがいたしましょう」とあったところ、お乳母が申すには「昔もあることなれば、こ