← 前のページ
ページ 102 / 117
次のページ →
翻刻
尋ニ付四十八手之貌認差上候ヘトモ相分ラス依之伊之助見蔵白洲ニ
於テ素裸ニ相成其形ヲ御見分ナサレ御扣ニ相成申候
右相撲一統ノ者ヘ為御褒美白銀三百枚被下置段池田筑後守殿被仰渡候
四十八手之古法
四十八手之古法ニ四手アリ頭ヲ以テスルコト反。手ヲ以テスルコト捻リ。腰ヲ以テスルコト投。
足ヲ以テスルコト掛。右四手ヨリ十二手ツヽ四十八手トナル
反 向《割書:フ|》反 居反 掛《割書:ケ|》反 寄《割書:リ|》反 伝反 撞木反 一寸反 キホウシ 枕カイナ反 鴨ノ入首 ク
シキ反 衣カツキ
捻 合掌捻 肩スカシ 外無双 内無双 突落シ 逆捻リ クシキ 引落シ 出捻
巻落 頭捻 片手ワク
投 上手投 下手投 引投 上矢倉 下矢倉 首投 カラミ投 握投 寄投
出《割書:シ|》投 手抜《割書:ノ|》腹投 八柄(カラ)投
掛(カケ) 二足掛 一本掛 内掛 外掛 手斧掛 泥障掛 呼掛 渡《割書:リ|》掛 タクリ掛
掛モタレ 水掛 伝掛
凡テ四十八手
惣シテ手ノ名ヲ記セトモ業ニシテ甚危シ尤名ハ頓智ヲ以テ呼歟業ハ気
変ノナス処意味アルコト其数ヲ不知然レトモ皆心ノ一ヨリ出ル一物動カサル故
手足能自由ヲナス業ハ必九死一生ナリ唯 忍(ヲス)トハ相撲ノ極意ニシテ忍(シノフ)ト云
字ナリ忍(シノフ)ハ一物ヲ内ニ置表ヲ和カニ出ルヲ忍(コラヘ)テ引(ヒカ)ハ忍(ヲソ)ウ突ハ忍ウ捻《割書:ラ|》ハ
忍ウタトヘ勝コト前ニアリトモ忍(ヲシ)テ勝ヲ大丈夫トス堪忍ノ忍(ニン)ノ字必 忍(ヲス)
ニアリスヘテ此意味稽古ノ妙術ヲ以テ委ク分ル是苦テ知ル知《割書:ニ|》至
テハ相撲行事ノ一事ナリ
【上段書込み】
《割書:享和二年|六月十六日》
《割書:白川御在城|ノ節於和》
《割書:党曲輪相撲|御覧ニ付》
《割書:御町奉行|両人同心廿人》
《割書:ツヽ召連|角力興行ノ》
《割書:場所左右ヘ|相詰固并》
《割書:不明御門|内和党曲》
《割書:輪ノ内外|御物頭両人》
《割書:組廿人ツヽ|召連固有》
《割書:之|但同心者》
現代語訳
尋問により四十八手の形を認めて差し上げるよう求められたが、はっきりしないため、伊之助と見蔵は白洲において素裸になり、その形を御見分いただいて記録となった。
右相撲一統の者へ褒美として白銀三百枚が下賜され、池田筑後守殿より仰せ渡された。
四十八手の古法
四十八手の古法には四つの手がある。頭を用いるものは「反り」、手を用いるものは「捻り」、腰を用いるものは「投げ」、足を用いるものは「掛け」である。右の四手からそれぞれ十二手ずつで四十八手となる。
反り:向こう反り、居反り、掛け反り、寄り反り、伝反り、撞木反り、一寸反り、きぼうし、枕腕反り、鴨の入首、くしき反り、衣被り
捻り:合掌捻り、肩透かし、外無双、内無双、突落とし、逆捻り、くしき、引落とし、出捻り、巻落とし、頭捻り、片手枠
投げ:上手投げ、下手投げ、引投げ、上矢倉、下矢倉、首投げ、からみ投げ、握投げ、寄投げ、出し投げ、手抜きの腹投げ、八柄投げ
掛け:二足掛け、一本掛け、内掛け、外掛け、手斧掛け、泥障掛け、呼掛け、渡り掛け、たくり掛け、掛けもたれ、水掛け、伝掛け
総て四十八手
総じて技の名前を記したが、技であって甚だ危険である。もっとも名前は頓智を以て呼ぶのだろうか。技は気変のなすところで意味あることその数を知らない。しかしながら皆心の一より出る。一物も動かさないゆえ手足がよく自由をなす。技は必ず九死一生である。ただ「忍ぶ」とは相撲の極意であって「忍ぶ」という字である。忍ぶは一物を内に置いて表を和やかに出るを忍んで、引けば忍び、突けば忍び、捻れば忍ぶ。たとえ勝つことが前にあっても忍んで勝つを大丈夫とする。堪忍の「忍」の字は必ず「忍ぶ」にあるべし。すべてこの意味は稽古の妙術を以て委しく分かる。これは苦労して知ること、知に至っては相撲行事の一事なり。
【上段書き込み】
享和二年六月十六日
白川御在城の節、和党曲輪において相撲御覧につき、御町奉行両人が同心二十人ずつ召し連れ、角力興行の場所左右へ相詰め固め、並びに不明御門内和党曲輪の内外、御物頭両人が組二十人ずつ召し連れ固めた。但し同心者